Blogrunnerの歴史を振り返っておこう。2003年に生まれ,2年ほど前にNYTに買収されたニュースアグリゲーターである。TechmemeやGoogle Newsと似通ったタイプのニュースサイトで,外部のニュースサイトやブログを定期的に巡回し,集めたニュース記事をカテゴリー別に分類し表示している。
NYTの傘下に入ったこともあって,2年前からはThe Annotated New York Timesと呼ばれるサービスも実験的に立ち上げている。NYTimes.comの記事がブログなどでどのように取り上げられているかを知ることができるサイトだ。

たとえば,NYTimes.comの記事“How Obama Became Acting President”をクリックすると,以下のようなページが現れる。その記事内容を引用したブログや,同じテーマを取り上げているブログが紹介されている(リンク付き)。また,同じテーマを扱っている関連記事(外部のニュースサイトの記事も含めて)も紹介されている。

つまり,NYTの各ニュース記事についてブロガーがどう見ているか,また同じテーマをブログや外部ニュースサイトがどのように取り上げているかがわかるわけだ。これは,NYTimes.comのニュース記事と外部のブログ記事とのリミックスサイトとも言える。ただ現時点では,The Annotated New York TimesがNYTimes.comのニュース記事を使っているだけであって,NYTimes.comからはThe Annotated New York Timesのコンテンツをまだ流用していない。いずれ相互連係が進むのではなかろうか。
このThe Annotated New York Times以上に注目したいのは,Blogrunnerのメインサイトであるニュースアグリゲーターだ。以下がそのサイトのトップページである。

現在,約1万2000のブログやメディアサイトを巡回して,記事を収集している。巡回するサイトは影響力を配慮したアルゴリズムで選ばれているが,NYTの記者も巡回対象のサイトをピックアップしている。重要と思われる記事を自動的に選んで次のカテゴリー別に表示しているが,いつでもNYTの編集者が介入できるようにしているという。
Politics
Technology
Media
Business
Economy
Law
Health
Movies
Books
Religion
Iraq
Entertainment
カテゴリー別のニュースページ例として,Politics分野を以下に掲げておく。“Top Stories”,“The Latest”,“By Source”の3通り別に,タブで切り替えて記事を閲覧できる。

Top Storiesでは主に24時間以内で発生した重要記事を選んでいるようだ。The Latestでは主に1時間以内のホットな記事を掲載している。By Sourceでは主要ニュースサイトやブログの最新記事を取り上げていた。Politics分野で選ばれていた主要サイトは次の通り。
CBS News
Consumer Law & Policy
Dot Earth
First Read
Fox News Channel
Hot Air TV
Los Angeles Times
Marc Ambinder
news.yahoo.com
NY Daily News
Political Punch
Political Radar
POLITICO Ben Smith
Reason Magazine - Hit & Run
The Associated Press
The Campaign Spot
The Caucus(NYT Political Blog)
The New York Times
The New Yorker
The POLITICO
The Stump
The Washington Post
Wall Street Journal
YouTube
Top Storiesで登場する記事のほとんどは,上の主要サイトから選ばれている。The Latestでは,次のブログやニュースサイトの記事もよく見かけた。
Daily Kos
Power Line
Weekly Standard Blog
TIME.com
The Swamp
The Guardian
Boston Globe
CNN Political Ticker
もっと頻繁に使わないと評価が難しいが,以前に比べるとかなり良くなってきたように思える。NYTimes.comがほとんど自前の記事だけで成り立っているのに対し,Blogrunnerは選別された世界中のブログやメディアサイトの記事から編成される。NYTimes.comの補完としてBlogrunnerを利用するユーザーが増えるかもしれないし,中にはメインサイトとしてBlogrunnerに切り替えるユーザーが出てくるかもしれない。Blogrunnerの改良が進んでいくと,表玄関よりも裏玄関を好むユーザーが増えてくるかも。BlogrunnerにはNYTimes.comの重要な記事が収容されているので,裏玄関から入っても見逃すことはないからだ。
先のThe Annotated New York Timesも含めてBlogrunnerのサービスはほとんど,NYTimes.comのドメイン外で展開されている。このためNYTと無縁のサイトとて見られ,実験的な試みが自由に行えているようだ。新聞社サイト内では,新聞社の信用やブランドを損なわないようにと,どうしてもいろんな制約が課せられる。新聞社サイトの外に置き,連係プレーも控えることで,これまでBlogrunnerは自由な新しい試みを実施してきた。
でもそろそろBlogrunnerは,NYTimes.comにご奉公すべき時期を迎えているようだ。昨年の秋から少しだけその動きを見せている。NYTimes.comのTechnology分野に,BlogrunnerのTechnology分野のコンテンツがWidgetの形で配置されたからだ。いずれTechnology分野以外でも同じような動きを始めるのではなかろうか。
もう一つBlogrunnerで見逃せない動きとしては,トピックス別コンテンツがある。Webサイトの最近の流れの中でトピックス別コンテンツの重要性が再認識されてきている。Blogrunnreを“topic discovery engine”と呼ぶ人もいるぐらいである。この動きについては次回で整理したい。
◇参考
・FAQ( Blogrunner)
・ オンラインに賭けるNew York Times, 次に仕掛ける大きな手は?(メディア・パブ)
・米新聞社サイトが打つ次の一手とは(メディア・パブ)
・NYTimesがWeb2.0風ベンチャーを買収していた(メディア・パブ)
・Interview With Blogrunner Product Manager Philippe Lourier; It's Worth Another Look(CenterNetworks)
技術者の私は、IT系ニュースを効率的に読みたので、Techmemeはよく見ています。Blogrunnerは知りませんでしたが、これからチェックしてみたいと思います。
日本でもこういった便利なニュースアグリゲーションサイトはないでしょうか?