Yahoo!ニュースは強い。国内の新聞社サイトと比べて,圧倒的な集客力を誇る。さらにこのほど,売り物のトピックスのソーシャル化を図ることにより,はるか後ろで追走するニュースサイトをさらに引き離しにかかる。
同社の媒体資料によると,Yahoo!ニュースの月間ユニークブラウザー数が平均5660万で,月間ページビュー数が平均35億1000となっている。これは2008年3月〜5月末の平均値である。一方,Nielsen Online調査による大手新聞社サイトの月間利用者数は400万人〜700万人程度で,月間ページビューは1億前後となっている。
ただし,Yahooが提示するブラウザー数はユニーク利用者数よりも多くなるはず。家庭とオフィスで別々のパソコン(ブラウザー)を利用している人がいるからだ。一方,パネラー形式のNielsenの調査では家庭からのアクセスしか対象にしていないので,オフィスからのトラフィックも含むと,もっと大きい数値になるはずだ。そういうことを勘案しても,Yahoo!ニュースのトラフィックは大手新聞社サイトよりも桁違いの大差をつけているのではなかろうか。
そこで,日本のニュースサイト市場で,なぜYahoo!ニュースが一人勝ちしてきたのかを見直してみる。その要因として次の4つをあげてみた。
1. ニュースアグリゲーター
2. Yahoo!JAPANからの太い導線
3. トピックスの採用
4. 新聞社の消極的なオンライン事業
まず,多くのニュースサイトの記事をワンストップ(Yahoo!ニュース)で閲覧できるようにして,ネット時代のユーザーニーズに応えてきた。このためにヤフーはニュースサイト(情報提供元)とコンテンツ利用の契約を結んでいる。
国内でダントツの集客力を誇るYahoo!JAPANから,多くのユーザーをYahoo!ニュースに送り込めるのも大きな強みとなっている。これはまさに,ヤフーだけがなしえる大技であろう。
そしてトピックス記事の採用が,Yahoo!ニュースの人気を一段と高めた。他の多くのニュースアグリゲーターのように,システムが自動的に編成しているだけではない。トピックスの編集は,ヤフーの専任スタッフが人手で独自に行っている。ニュースサイト(情報提供元)からの記事を人手で取捨選別し,わかりやすい見出しを独自に付け,それを対応するトピックに組み込む形で提供しているのだ。
そのトピックに多くのユーザーを送り込むために,Yahoo! JAPANのトップページからトピックスページに太い導線を用意した。Yahoo!JAPANのトップページと言えば,国内の多くのインターネットユーザーにとって,スタートページとなっている。そのトップページだけで月間ページビューが48億0090万にもなる。その国内で最も賑わっているページにおいて,最も目立つ形でトピックス記事に誘導させる見出しを露出させているのだ。
このようにトピックスページへ大量のトラフィックを運ぶ導線を仕掛けることにより,Yahoo!ニュースの月間ページビューが35億にも達しているのだ。そのトラフィックのかなりの割合がトピックスページで占められているのである。
ネットの特性とYahoo Japanのリソースを巧みに活用すことにより,Yahoo!ニュースは日本国内でぶっちぎりの独走態勢を固めてきた。同サイトを勢いづけてきた要因の一つに,新聞社のオンライン事業への慎重な取り組みも見逃せない。オンラインニュースでも本流を走るはずの新聞社であったが,収益性の高い新聞紙ビジネスを守るために,オンライン事業に積極的に取り組んでこなかった。さらにソーシャル化の取り組でも,Yahoo!ニュースに先手を打たれている。
次回(その2)では,Yahoo!ニュースのソーシャル化について。
追記:図と本文の一部を訂正しました
(9月1日)
◇参考
・Yahoo! JAPAN 媒体資料 2008年7月改訂版
・【ネット視聴率】新聞社サイトの利用者数の推移(MarkeZine)
・「明暗分かれる新聞社サイト」,p.33,月刊アスキー,2008年10月号