装い新たなWSJ.comのスナップショットは以下の通り。当然のようにトップページは,リーマン破綻を報じる記事で埋め尽くされていた。
マードックの要望を受けて,WSJはガチガチの金融ビジネス紙から脱皮し,政治やエンターテインメントなど一般分野も力を入れてきた。購読者数を増やすためである。将来の牽引車となるWSJ.comについても,半年前から全面刷新することを宣言していた。
今回の刷新で注目したいのは,有料購読サービスと無料コンテンツサービス(広告事業)をどのように両立させていくかである。値上げが予想されていた有料サービスは,景気後退もあってか,次のように据え置きにするようである。
Print Journal (新聞) :年間89ドル
WSJ.com (オンライン):年間89ドル
WSJ.com+Print Journal : 年間99ドル
WSJ.com における有料記事と無料記事の区別を明示し,棲み分けも明確にしている。有料記事には“鍵アイコン”を付けるようにした。そして,仕事に直結するカテゴリーの記事(BtoB記事)は大半が有料になっている。それ以外の仕事に直結しない記事は無料にした。具体的には次のようになっている。
・U.S.:無料
・WORLD:無料
・BUSINESS:大半が有料,一部が無料
・MARKETS:大半が有料,一部が無料
・TECH:大半が有料,一部が無料
・PERSONAL FINANCE:無料
・LIFE & STYLE:無料
・OPINION:無料
・CAREERS:無料
・REAL ESTATE:無料
・SMALL BUSINESS:無料
Bisiness,Markets,Techの3分野の記事は,多くが有料になっていた。以下は,ビジネス分野のニュースページである。“鍵アイコン”の付いた記事が多い。
プレスリリースでは,Small business, Technology, U.S.news, World news, Politics, Personal Finance ,Lifestyle の分野のコンテンツを拡充したと説明している。Technology分野を除けば,いずれの分野の記事も無料で閲覧できる。以下は,Personal Finance分野のニュースページである。“鍵アイコン”が見当たらなかった。
politics, general news, sports, travel, fashion, personal finance, food and drinkなどの記事や,Journal Women の記事,それにすべてのblogs, video, photos, podcastsは無料でアクセスできる。
WSJでないと得られない,仕事に直結したビジネス/マーケット/技術分野のコンテンツを有料の壁で守り抜く。それ以外の分野のコンテンツは無料にし,特に広告の見込める分野のコンテンツは拡充する。わかりやすい戦略だ。
WSJ.comの有料購読者数は100万人に達し,この1年間で5%増えた。またWSJ.com のビジター数は,Omnitureの測定によると,この1年間で84%も増えた。無料コンテンツの拡充により,今後ともトラフィック増が期待できそうだ。有料サービスと無料サービスの両輪が,うまく回転している。
また,WSJ.comの有料購読者限定の“Journal Community”サービス も新たに始めた。有料読者は各記事にコメントを加えたり,記事に絡んだ質問を専門家(WSJの編集チームや特別ゲスト)に投げかけることができる。討論グループにも参加できる。
マードックは今だにビジネスがうまいメディア王なのかな。
◇参考
・Wall Street Journal Online to Unveil Significant Redesign(プレスリリース)
・WSJサイトが有料の砦を死守,でも実際は無料記事拡大へまい進(メディア・パブ)
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