同サイトの公式ブログが伝えていたニュースだが,大した話でもないので無視していた。ところがその後,Google Reader Blog(Googleの公式ブログ)が次のように絶賛しているではないか。
The Guardian just moved all of their RSS feeds from partial to full-text. They are the first major newspaper in the world to do so, and this is, well, great news.記事全文のRSSフィード配信を実施したのは,世界中の新聞社サイトでGuardianが事実上初めてだという。確かに注目すべきニュースかもしれない。でも有力新聞社のサイトが,いまだに記事全文のRSSフィード配信を実施していなかった事実の方こそニュースではなかろうか。
3年以上前に,「RSSフィード論争,“抜粋 vs 記事全文”」 のタイトルの記事を書いたことがある。こんな論争はもう終わっていると思っていた。ブログなどでは,RSSフィードで全文配信することは普通である。でも、なぜ新聞社サイトが全文配信を実施しなかったのか。Publishing2.0のScott Karpも解説しているように理由は明らかである。
RSSフィードで記事全文を配信すると,RSSリーダー側で記事全文を読まれるため,多くのRSSリーダーユーザーが新聞社サイトにアクセスしなくなるからだ。新聞社サイトは,売上の大半を新聞社サイトの広告売上に依存している。このため,全文配信するとページビューが減り,それに応じて広告売上も減る心配が生じる。
だが,RSSリーダーで情報収集しているユーザーからすれば,抜粋(記事の一部)ではなくて全文をRSSフィードで配信してほしい。RSSリーダーを利用するメリットは,ワンストップで複数のサイトの記事を閲覧できることである。つまり,いちいち複数のサイトに飛ばなくても済むからだ。でもRSSフィードで抜粋記事が配信されていると,別のWebサイトにわざわざ飛ぶことが増え,作業効率が落ちてしまう。
Guardianは抜粋配信から全文配信に切り替えたのだが,Webサイト(Guardian.co.uk)へのアクセスが減って,広告売上が落ちないのだろうか。開発者のMatt McAlisterは,RSSフィード内広告を採用することで対応していくという。後で述べるように,Guardianが配信するRSSフィードは種類が豊富で,そのうえ全文配信する。ユーザーのニーズに応えたRSS配信サービスなので,RSSリーダーで閲覧するユーザーがぐんと増えるかも。RSSフィード内広告の売上をかなり当てにしているようだ。
GuardianRSSフィードはきめ細かく用意されており,利用したくなる。まずニュースカテゴリー別(大分類別,中分類別,小分類別)にRSSフィードが揃っている。またジャーナリスト別(記者別,ブロガー別,寄稿者別)のRSSフィードも用意されている。トピック別(a-z of subjects)からも,所望のRSSフィードを探せるようになっている。例えば,Japan関連ニュースの新着記事をチェックしたければ,こちら(http://www.guardian.co.uk/world/japan/rss)のように閲覧できる。
新聞社のオンライン事業で,以前から先駆的な役割を演じてきたのがGuardianであった。デジタルアーカイブも充実しており,1791年からの全記事を用意している。サイトのデザインも優れている。その結果,英国ではトップランナーの新聞社サイトとなった。Audit Bureau of Circulations Electronic (ABCe) によると,Guardian.co.uk の9月のユニークユーザー数は2419万人である。
◇参考
・Upgrading our RSS feeds(Guardian)
・Reading The Guardian, full-text style(Google Reader Blog)
・RSSフィード論争,“抜粋 vs 記事全文” (メディア・パブ)
・RSS Adoption at 11% and it May Be Peaking, Forrester Says(Micro Persuation)
・Most B2B Tech Companies Don't Use RSS Feeds(MarketingVOX)
・ABCes September 08: Independent sees 21 per cent rise while traffic drops at Mirror and Sun Online(journalism.co.uk)
・Guardian Launches Full RSS Feeds, First Media Company Not To Suppress RSS Adoption(Publishing2.0)
・RSSフィードの普及率は約1割止まり,リーダー利用はニッチだが情報流通には必須(メディア・パブ)
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