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2008年11月01日

YouTubeキラーの“Hulu”,放送からオンラインTVの流れを加速化

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 ビデオ配信サイトのHuluが,TV番組のオンラインシフトを本格化させている。

 HuluはNBC UniversalとNews Corpのジョイントベンチャーで,昨年10月末のβ版テストから満一年を迎えた(正式サービスは今年3月から米国で開始)。伝統的なコンテンツ提供者が団結して運用する配信サイトは挫折しがちであるが,予想に反して順調に滑り出しているのだ。

 Nielsen Onlineが発表したVideoCensusデータによると,今年9月のHuluは月間ビデオストリーム総計が1億4226万で,米国のビデオ配信サイトの中で7位に浮上してきた。今年4月の6323万ストリーム(10位)から急成長している。ユニークユーザー数も4月の243万人から9月の632万人へと急増した。

 なぜ順調に離陸しているのだろうか。まず広告が付くが,1000シーリズ以上のテレビ番組や,400本以上の映画を無料視聴できることが大きい。多くのTVシリーズの最新エピソードが提供されている。Huluユーザーへのアンケート調査によると,回答者の38%は放送で見なかったTV番組をオンラインで視聴するようになったという。また28%は放送で見過ごした番組をHuluで視聴している。19%はTV放送では見れなくなった番組を視聴している。オンラインTVとしてのHuluが浸透してきているようだ。

 それとHulu人気の要因として注目されているのは,コマーシャル時間が短いことだ。米国のTV放送の特徴はコマーシャル時間が長いことで,このことでうんざりしているユーザーが多い。Huluの短いコマーシャル時間は,放送からHuluへのユーザーシフトを促している。例えばFoxの“Family Guy”やNBCの“The Office”のような30分コメディーはHuluでも人気が高い番組だが,コマーシャル時間がTVでは8分に対し,Huluでは2分と短いのだ。これじゃ,多くの視聴者がオンラインのHuluに流れそう。

 コマーシャル時間を短縮することによって,Huluの広告のクリック率もアップし,広告売上も順調に増えているという。お陰で広告主数も,サービス当初の10社から,現在は100社を超えている。広告枠もほぼ完売の盛況で,広告在庫が足りない。HuluコンテンツをTv.comなどの他サイトに配信したり,人気番組の配信を増やして対応している。9月13日の米副大統領候補Sarah Palin登場の番組は,HuluとNBC.comを合わせて1430万回も視聴されたという。この結果LiveRailのレポート“State of the Industry”によると,最初の1年間で広告売上が9000万ドルに達する。健闘している。

 だがビデオ配信市場は,YouTubeという大物がすでに制覇しているのではなかろうか。Hulu誕生の背景には,ビデオ市場をGoogle(YouTube)が事実上支配しつつあったからだ。そこで,YouTubeキラーとして,伝統メディアのNBC UniversalとNews Corpが結束し立ち上がった。でも,時は遅すぎたの声が。

 Nielsenの2008年9月データによると、ビデオストリーム総計/ユニークユーザー数は,Huluの1億4226万ストリーム/632万人に対し,YouTubeは何と53億5439万ストリーム/8188万人である。あまりにも差がありすぎる。勝負にならない・・・。

 ところがどっこいである。いくら桁違いの人気があっても,商売がうまくいっているとは限らない。LiveRailのレポートは,YouTubeの今年の広告売上を2億ドルと予測している。このうち米国市場は半分と見て,米国の広告売上は約1億ドルとしている。米国限定で始まったHuluの広告売上を9000万ドルと推定している。つまり,米市場ではHuluはYouTubeと肩を並べたことになるのだ。

 なぜこうなるのか。Huluは合法的な動画コンテンツだけを提供しているのに対し,YouTubeは(User Generated Video)も含んだ動画投稿サイトで,非合法のコンテンツも混じったりしている。安心できる広告媒体としては,Huluになびく広告主が増えているのも当然かも。Huluは在庫が少ないこともあるが,広告枠はほぼ100%の完売という。一方,YouTubeは広告枠の3%しか売れていなくて,ほとんどが売れ残っている。

 Huluはオンラインビデオ広告市場で軌道に乗り始めた。商売では明らかにYouTubeキラーになろうとしている。そして,広告やユーザーの放送からオンラインへのシフトも,いよいよ本格化してきた。

 

◇参考
・YouTubeキラーの“Hulu”,出足の評判は上々(メディア・パブ)
・インターネットTVの本流は,YouTubeかHuluか(メディア・パブ)
・Hulu Surpassed 140M Streams in Sept.(NewTeeVee)
・Advertising - Web Site’s Formula for Success - TV Content With Fewer Ads (NYTimes.com)
・Web Site’s Formula for Success: TV Content With Fewer Ads(NYTimes.com)
・Hulu: Ugly Duckling No More(ReadWriteWeb)
・State of the Industry(LiveRail)


タグ:ビデオ YouTube Hulu

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posted by 田中善一郎 at 10:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
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