WSJは単なる金融紙ではなくて,幅広くビジネスや政治さらにはスポーツ分野もしっかりとカバーした総合紙的な色彩を濃くしてきている。つまりNYTの得意とするカバー領域に侵食しているのだ。迎え撃つNYTは逆にWSJの専門領域である金融分野を強化している。
だが,この1年間の戦いでは,WSJに軍パイを上げる結果となった。ABC調査による9月の有料購読者数は, WSJは140万人と1年前に比べ2.4%増となった。一方,NYTは85万9000人と5.5%減に落ち込んだ。サブプライム問題から始まった金融危機が,WSJにとって追い風になったのは間違いない。金融関連ニュースとなればやはりWSJが優位である。また,NYTがオンラインサイトを充実させた結果,NYTの記事を読むならサイトコンテンツで十分となり,家計が厳しくなってきた読者が新聞紙購読中止に走ったのかもしれない。
この結果は,新聞広告にも影響が現われてきた。富裕者向けのブランド商品の広告が,WSJに流れているようだ。今までNYTのお得意さんであったSaks,Dolce & Gabbana SpA ,LVMH Moet Hennessy Louis Vuitton SAといった富裕者層向け広告が,WSJの紙面に登場し始めたのだ。
NYTの最近の月次決算では,新聞紙広告売上が前年同期比で約15%減が続いている。こうした広告売上の大幅減により,NYTの経営は窮地に追い込まれきた。後がないNYTをWSJが攻め立てる。
◇参考
・Wall Street Journal Invades News York Times’ Ad Turf(Blommberg)
・New York Times (NYT) Now Losing Business To Wall Street Journal(Silicon Alley Insider)
・NYTがタイタニックのように沈没しかねない?(メディア・パブ)
・NYTの新聞部数は下降続くが,WSJはマードック効果?で踏み止まる(メディア・パブ)