eMarketerが発行したレポート“ Newspapers in Crisis:Migrating Online”でも,景気回復後も米新聞社の広告売上が下げ続くと予測している。以下の表は,2012年までの米新聞社の総広告売上高を示している。2006年と2007年のデータは米新聞協会NAA(Newspaper Association of America)の発表値である。

2008年と2009年の不況時に,広告売上が激減するのは止むを得ないとしても,その後の景気回復に合わせてリバウンドを期待したいところ。だが,2010年以降に景気が良くなったとしても広告は減り続けるということだ。この表の広告費にはオンライン(ネット)広告も含まれているが,それでもマイナス成長が止まらないのである。

新聞社が期待を寄せるオンライン広告は,2007年まで高成長を続けていた。ところが,2008年に初めてマイナス成長に陥ったようなのだ。オンライン広告は2010年以降に再び2桁台のプラス成長復帰が見込まれているが,上のグラフのようにオンライン広告の絶対額がプリント(新聞紙)広告に比べ小さいため,新聞紙広告の落ち込みをオンライン広告で補うことはしばらく難しい。
その結果,2012年の広告売上が284億ドルと,2006年の493億ドルに比べほぼ半分に落ち込む。米新聞社の多くは総売上高の7割前後を広告売上に依存しているだけに,経営破綻する新聞社が続出するのは避けられないだろう。
米新聞業界が構造的な不況業種になり下がったのは,次のグラフからも明らかである。Kubas Consultantsがまとめたグラフで,1995年から現在までにGDP,小売売上,新聞広告売上(プリント+オンライン),それに新聞広告売上(プリント)のそれぞれがどのように増減してきたかを示ている。1995年の値を100とした時のグラフである。2000年まで新聞広告売上はGDPの伸びに合わせて増えたいたが,2006年頃から新聞広告売上とGDPの成長率ギャップは拡大する一方である。

◇参考
・Newspapers in Crisis:Migrating Online(eMarketer)
・Advertising Expenditures(NAA)
・Preview 2009:Newspapers' Outlook Ad Revenue Growth and
Strategic Initiatives(Kubas Consultants)
・『先進的に取りくみつつ「急降下」するアメリカの新聞社』,Journalism,2009年1月号,no.224,pp.4-11(朝日新聞社):アマゾンや富士山マガジンサービスで購入可能
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