(ソース: Life/Google archive:1962年のNYCの新聞ストライキ日に、米コロンビア大の学生が学生新聞を売っていた)
"NEWSPAPERLESS"とは「新聞が消える」ことなのか? 実際には、「新聞(newspaper)が消える(less)」でなくて、「newsを載せた紙が消える(paperless)」なのかもしれない。でも新聞紙にこだわってばかりいると、本当に新聞社(新聞紙社)が消えてしまうかもしれないが・・・。
そのNEWSPAPERLESSの流れの中で、新聞社の活路として一部の新聞関係者の間で期待が集まるのが「電子ペーパー」リーダーである。新聞コンテンツを紙にプリントして物理的に配達するのではなくて、デジタルの形でまるごとネットで配信し、Kindleのようなリーダーで閲覧してもらう方法である。新聞紙の印刷や配達が要らなくなるので、大幅な経費カットが期待できるかもしれない。
そこで、ブログSilicon Alley insiderが、次のような大胆な提案記事を投稿していた。新聞紙を止めて、新聞紙の定期購読者にアマゾンの電子ペーパーリーダーKindleを無料配布する提案である。そうすれば、NYTの年間経費を半減できるというのだ。
(Amazon)
Silicon Alley insiderの試算では、NYTの経費( production costs in terms of raw materials and wages/benefits )は年間8億4400万ドルとしている。そのうちニュース編集室(newsroom)経費は2億ドルという。残りの6億4400万ドルが印刷・配達(print and distribute the physical newspaper)の経費としている。本当かな?
ところでNYT紙の定期購読者数は83万人である。このシミュレーションでは、潔く新聞紙を完全に止めて、輪転機とお別れをする。そこで83万人の定期購読者全員にKindelでデジタル新聞を読んでもらう。そのために、1台359ドルのKindleを無料で全員に配布する。この結果、
83万×359ドル=2億9700万ドル
が新たな経費となる。
つまり、印刷・配達の6億4400万ドルの代わりに、2億9700万ドルで済むから、経費が半分以下に節減できるというわけだ。かなり大雑把などんぶり勘定である。
しかも、このシミュレーションは落とし穴がある。まず新聞紙を出さなくなると、新聞紙広告がゼロになってしまう。新聞紙広告が急減していると言っても絶対額は大きく、現在のNYT社の売上の大半を占めている。また、Kindleで送るデジタル新聞への広告掲載はあまり期待できないだろう。それに、83万人の新聞紙定期購読者のかなり多くの人は、Kindleでの購読を止めてしまうかもしれない。その購読中止者を少なくするには、NYTimes.comの有料化しなければならないだろう。そうするとNYTimes.comのオンライン広告売上が減ってしまうだろう。
経費を大幅に節減したとしても、それ以上に売上が減ってしまいそう。
◇参考
・Printing The NYT Costs Twice As Much As Sending Every Subscriber A Free Kindle(Silicon Alley Insider)