米アリゾナの地方紙East Valley Tribune でも昨年(2008年)10月に、全社員の40%に相当する142人がレイオフで職場を去ることになった。だが大不況下では新しい職を探すのは大変である。ましてや新聞社に転職するのは、どこも人減らしに躍起な時だけに、絶望的かもしれない。
で、どうしてもジャーナリスト業に固執したい記者はどうしたのだろうか。East Valley Tribuneのニュースルームから追い出された新聞記者が挑んだ行動について,MediaShiftが二つの例を紹介していた。
一つは、Tribuneを離れたベテランジャーナリスト4人が組んで、オンライン新聞のArizona Guardian を立ち上げた事例である。政治分野、キャンペーン、掘り下げた調査取材に力を入れている。硬派の記事が中心のニュースサイトである。既存新聞社が人員削減で手薄になってきている分野を、あえてカバーしているのである。記事の閲覧は、初め無料であったが、最近有料化にした。月間購読料は150ドルと高い。限定した記事の場合は月間30ドルである(購読料一覧)。
もう一つは、同じTribune を解雇された26歳の若手ジャーナリストの事例である。彼は州政府や法廷をカバーしていたのだが、レイオフを言い渡された。その時すぐに、今までやっていたことをネットで継続させたいと考えた。5日間で下のサイトHeat Cityを開設した。
彼はTribune時代から絶えず裁判関係のブログを書いていたが、約5000人の常連読者を抱えており、それを今も継続させている。Heat Cityの目玉記事はフェニックスの連続殺人事件犯人の裁判記事である。記事の閲覧は無料であるが、寄付を募っている。
このような不景気時には、広告収入にほとんど頼れない。硬派なニュースだけだと、もともと広告メディアとしてやっていくのが難しい。だから販売収入や寄付金に依存することになっている。経営的にはかなり厳しいだろう。
でも、彼らは生活のためだけでニュースサイトを立ち上げたわけでない。ジャーナリストとしてやらなければとの使命感があったようだ。経営危機に追い詰められた新聞社が、記者削減に伴って縮小している分野を、自分たちがカバーしなければとの使命感である。州の政治や裁判を監視する役割を、既存新聞では果たせなくなってきているのではとの危機感である。Heat Cityを仕掛けたNick Martinも明言している。Heat Cityは実験的な試みであって、ビジネスベンチャーじゃないと。
◇参考
・Laid-Off Arizona Journalists Start Online-Only Publications(MediaShift)
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