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2009年03月12日

新聞社サイトもオープンプラットフォーム時代へ、英Guardianが挑戦

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 英Gaurdianのオープンプラットフォームは,将来の新聞社サイトを先取りする挑戦として見逃せない。

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 新聞社サイトの開放(オープン)化は一昨年あたりから盛んになってきた。ユーザーを囲い込む閉鎖的(クローズ)なサイトには、若いユーザーが敬遠するようになっているからだ。そのオープン化の流れの中で、オープンプラットフォーム化がニュースサイトでも昨年から芽生え始めている。

 API (Application Programming Interface)を介して,ニュースサイトの自前コンテンツを外部に開放する動きである。その動きで先行したのが,BBC,NPR (National Public Radio),それにNYT(New York Times)の各サイトである。中でも注目されているのが,NYTのAPI(The Article Search API)である。

 そして,オンラインサイトの先進性でNYTと競う英Guardianも,このほどオープンプラットフォームの提供を開始した。APIを介して、Guardianのオンラインおよび新聞のコンテンツ(1999年に遡って約100万本の記事)やデータセットを無料で、外部のサードパーティーに開放するのである。サードパーティーはGuardianのコンテンツを利用したサービスをユーザーに提供できるようになる。

 ここで注目すべきは、GuardianとNYTのオープンプラットフォームに大きな違いが見られることだ。Guardianのサービスでは、サードパーティーがGuardian記事の本文全部を取り込んむことができる。一方NYTのサービスでは、サードパーティーが取り込めるのは見出しと要約だけで,本文はNYTのサイトで閲覧することになる。コンテンツ全てを開放するというGuardianの大胆な行動は、RSSフィードの配信サービスでも既に敢行している。つまり、記事全文をRSSフィードで配信していたのだ。

 でも本来、APIによるオープン化やRSSフィードの配信サービスも、自分のサイトにユーザーを誘導する狙いがあったはず。Guardianのようにコンテンツ全てを外部サイトに開放してしまうと、Guardianサイト(Guardian.co.uk)にユーザーがアクセスしなくなのでと心配してしまう。

 ところが,Guardianのプラットフォームには挑戦的な仕掛けが隠されているのだ。サードパーティーがGuardianのコンテンツを商業利用することを認める代わりに,Guardianのアドネットワーク向けの広告枠をサードパーティーサイトに用意させるようにしたのだ。つまり、マネタイズの仕組みを仕掛けているのだ。一方NYTのAPIによるオープン化では、サードパーティーにNYTのコンテンツを利用する商業サービスを原則として認めていない。でも、マネタイズの仕組みを取り込むことは考えているはず。

 ともかくGuardianのオープンプラットフォームは、リスクが伴うが野心的な挑戦と言える。将来の新聞社サイトは,より多くのユーザーが訪れるデスティネーションである必然性はないと主張したいようだ。新聞社サイトの記事は,何も自社サイトで閲覧されなくても、インターネットのどこかで利用されれば良いのだ。それよりも、パートナーとなる多くのサードパーティーにGuardianのコンテンツを読んでもらえる工夫を考えてもらう。Guardianとしては、アドネットワークのようなマネタイズの仕掛けを組み込むことの方が重要と見ているのだ。これって,日本のヤフーのオープン化戦略とも似ているではないか。

 もう一つ、Guardianのオープンプラットフォームで批判が出そうなのは、Guardian.co.ukがデスティネーションサイトとしての役割が減っていき,ブランド力が弱まるとの懸念である。だがすでに現在でも、ソーシャルメディア経由で新聞社サイトのニュース記事を閲覧する場合、ユーザーはサイトがどこかをほとんど意識しなくなっている。でも、記事単位にラベル(ロゴなど)が付いている限り、ブランドは失われない。記事のソース元がどこかは、ユーザーが記事を選ぶ場合の判断基準となるので重要である。やはりGuardianやNYTの記事であるかどうかはユーザーも気にしている。

 Amazon、Google、Facebookなどと同じように、Guardianもオープンプラットフォームの世界に入り込んできた。貴重な財産であるコンテンツ(データベース)を開放することはリスクを伴うが、一方でビジネスを拡大できる可能性も秘めている。最近の新聞社サイトば、いつ店じまいをするのかという暗い話ばかり。その中で、Guardianのオープンプラットフォームのような将来を見据えた夢のある挑戦には、応援をしたくなる。



◇参考
・Guardian launches Open Platform tool to make online content available free(guardian.co.uk)
・What is the Open Platform?(guardian.co.uk)
・Upgrading our RSS feeds(guardian.co.uk)
・The Guardian Launches Open Platform: Why This is Really Big(NewsCred Blog)
・Times Developer Network(NYTimes.com)
タグ:新聞

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posted by 田中善一郎 at 08:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
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