このように新聞社関係者が小躍りして喜ぶようなデータを、 Nieman Journalism Labの Martin Langeveldが発表した。まず彼の言い分を聞いてみよう。
新聞社が提供している新聞紙とニュースサイトを対象に、読者が何時間かけて何ページくらい閲読しているかを、米新聞協会のデータをもとにはじきだしている。
最初に、Daily and Sunday Newspapers 2007 Readers Per Copyから、新聞紙の月間閲読ページ数を計算した。新聞紙の閲読数(2007年データ)は、平日版が1億1680万人、日曜版が1億3410万人である。ただし1紙を何人で回し読みしているかの回読率は平日版が2.128人、日曜版が2.477人としている。ここで、1読者が平均して新聞紙の24ページに毎日目を通したとする(これは経験則でエイヤァと想定)。
この前提で、新聞紙の月間閲読ページの総数を計算すると、
871億ページ=(1億1680万×平日数/月+1億3410万×日曜日数/月)×24
となる。
一方、NAAレポート( NAA reports the daily newspaper online audience as measured by Nielsen)による、新聞社サイトのページビュー(2008年データ)は32億ページとなる。

新聞紙とオンライン(新聞社サイト)の両ページインプレッションを足し合わせると、
903億ページ=871億ページ+32億ページ
つまり、新聞の月間ページインプレッションのうち、プリント(新聞紙)が96.5%も占めているのに、オンラインが3.5%である。
突っ込みたい点は山ほどあるが、一つの主張として聞いておこう。
次は接触時間の比較である。Nilsenのデータから、新聞社サイトの月間の総閲覧時間は、
30億3000分=45分(ユニークビジター一人の月間閲覧時間)×6730万(月間ユニークビジター数)
となる。
一方、新聞紙の接触時間のデータは存在しないが、Martin Langeveld自身は月〜土の平日に毎日25分、日曜日は35分かけて新聞を読んでいるという。他人も同じ時間を新聞紙閲読に要しているとすると、総計は965億分となる。
つまり、新聞社が新聞紙やサイトで提供する記事を、月間995億分かけてユーザーが閲読していることになる。
995億分=965億分+30億分
その総接触時間の97%が新聞紙であって、オンラインサイトに費やする時間の割合はわずか3%となっている。
今回の算出は全般に、新聞紙のページインプレッションや接触時間をかさ上げするようなデータを選んで使っているように思える。それに、米国ではニュースサイトの市場で、新聞社サイトが必ずしも主役を演じていないことも念頭にいれるべきであろう。トップ3はCNN、MSNBC、Yahooが常連である。
ただこのレポートで主張したいように、忠実な中高年層の新聞読者の多くが今も新聞紙にこだわっているのは確かであろう。でも、新聞紙読者がオンライン新聞にほとんど見向きもしていないと言い切れるかどうか。それに、若者の多くは最初からオンライン派であって、新聞紙読者ではない。
高価な新聞広告の対象者であった新聞読者が、新聞社サイトをほとんど見ていないということは、新聞紙の主要広告が新聞社サイトに流れないということか。得体のしれないオンラインなんかよりも、やっぱり新聞“紙”で頑張っていきたいと考えている新聞社経営者にとって、このレポートは恰好の応援歌になりそう。
◇参考
・Print is still king: Only 3 percent of newspaper reading happens online(Nieman Journalism Lab)
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