大手の技術系出版社のIDGが、景気後退にもかかわらず売上を伸ばしている。オンラインシフトが軌道に乗っているため、逆風の中でも収益を増やしているようである。
創業者であり、今も会長として陣頭指揮を執るパトリック・マクガバンPatrick McGovern(71)が、MediaShiftのインタビューに応えていたので、興味深い発言をまとめておく。
その前に、IDGの業績と最近の戦略について。
・2008年の年間売上高:32億ドル
・世界で運用中のWebサイト:450サイト以上
・オンライン売上比率:総売上の48%
・ IDGTechNetworkの月間ユニークビジター数:平均4000万人
IDGの大きな戦略転換としては、2007年にオンライン事業を最優先に置いたことがある。その象徴的な決定の一つが、旗艦メディアのInfoWorldをオンラインオンリーとしたことだ。
以下は主なQ&A。
Q:オンライン優先の今後
A:この3年間で、オンライン売上比率が35%から48%にアップした。2010年には、オンライン売上を50%、プリント(雑誌)売上を35%、会議/イベント売上を15%にする。景気後退期なので、イメージ/ブランド広告よりも、パフォーマンス志向の広告が増える。見込み客獲得のための「lead generation」に特に力を入れていく。
Q:InfoWorldを雑誌からオンラインオンリーへの切り替えで何を学んだか。
A:オンラインならではの表現手法を開発。その一つに、アニメを利用したInfoClipz(たとえばGreen Technology)などがある。雑誌を休刊することにより売上を40%ほど失ったが、オンラインユーザーが増えて結局は売上を10%も伸ばすことになった。
Q:IDG TechNetwork の展開について。
A:現在、Webサイトやブログが153サイトも参加している。有力ブログのGigaOmも仲間に入った。ターゲット化したアドネットワークとして、広告売上が急増している。参加サイトコンテンツの品質テストを実施しており、われわれの品質テストにパスしなかったサイトは仲間から外す。
Q:コンテンツの60%がUGC( user-generated content)であるが、今後UGCの割合をもっと増やしていくのか
A:仕事向けのB2Bメディアの場合は、読者の多くが専門知識を持っているので、彼らと経験を共有することは重要。UGCは拡大していくだろう。
Q:景気後退の影響は
A:雑誌(プリント)事業の広告は20%ダウンした。 lead generationビジネスは30%〜40%も急成長した。そのため全体では、売上を8〜10%ほど増やせた。オンライン広告もCPMタイプ広告は3〜4%の伸びに留まっている。つまりページビュー依存の広告が伸び悩んでいる。しかし我々はcost-per-lead (CPL)に力を入れてきたので、 売上を伸ばすことができた。
◇参考
・How Tech Publisher IDG Grows Revenues During Recession( MediaShift)
・InfoWorld Leads Way as IDG Goes Head-First on Web( MediaShift)
・伝統メディアの垂直アドネットワーク,ポータル系巨大ネットへの従属嫌う(メディア・パブ)
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