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2009年05月08日

動画サイトHulu、マネタイジングではYouTubeをしのぐ勢い

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 米動画サイトのHuluが勢いづいてきた。トラフィック競争ではYouTubeが独走しているが,マネタイジング競争ではHuluが抜き出る勢いを見せ始めている。

 オンライン動画市場は,各社の調査データを見る限り,YouTubeの独り勝ちである。comScoreやNielsenが実施した最新の3月調査結果でも,以下のように米国の動画サイトの中でYouTubeがダントツの動画視聴回数を誇っている。

●comScoreの調査
OnlineVideocomScore0903.jpg

●Nielsen onlineの調査
NilsenVideoStream200903.jpg

 YouTubeの圧勝と見られていたオンライン動画市場に,Huluが割り込んできたのである。Huluは一昨年のテスト段階を経て,昨年3月から正式サービスに入ったばかりなのに,上の調査データでもわかるように,一気に3位あるいは2位に浮上してきている。それでも動画の再生回数でHuluはYouTubeの1/10以下と,量的には大差をつけられている。ところが質的なサービス展開となると,Huluは必ずしも負けていないのである。Huluは合法的な動画コンテンツに絞って提供しているからだ。そのため,収益の柱となる広告事業では優位性を発揮し始めていた。すでに米国市場においては,2008年の広告売上高でHuluとYoutubeが肩を並べているとも言われている。

  もともとHuluは,YouTube(Google)対抗で生まれたプロジェクトである。YouTubeがオンラインビデオ市場で独走態勢に入り、Googleが動画配信サービス事業の制空権を完全に掌握しようとしていたからである。そこで,伝統的な動画所有者であるメディア企業が,呉越同舟の形でHuluを立ち上げたのだ。まずNBC UniversalとNews Corp(傘下にFox)が手を組んだ。HuluではNBC UniversalやFoxの動画コンテンツだけではなく,他のTV局や映画会社のコンテンツも扱った。プロが作成したTVドラマや映画を無料(コマーシャル付き)で次々と提供することにより,人気が高まってきたのである。

  迎え撃つYouTubeは圧倒的な人気を誇りながら,トラフィックの巨大化につれてサイト運用の損失が膨ら一方となり,安定した収益モデルの確立を迫れらていた。そこで同じように,合法的な動画コンテンツの取り込みが必要となり,動画コンテンツを持つメディア企業への働きかけに力を入れ始めた。そのため動画コンテンツの取り込みを巡っても,YoutubeとHuluとの戦いが激しくなってきた。

 そうした状況下でこのほど(米時間4月30日),ウォルト・ディズニー(Walt Disney)もHuluに出資し仲間入りすることになった。DisneyやABCの動画コンテンツがHuluのメニューに数多く登場することになる。NBC UniversalとNews Corp,それにDisneyを加えた大手メディア3社はそれぞれHuluの30%近い(27%らしい)株を所有し,彼らの動画コンテンツの重要な配信チャンネルとしてHuluを利用することになった。YouTubeにとっては気がかりな流れである。

 さらにHuluはCBSにも仲間入りを働きかけている。CBSを加えれば,3大放送ネットワーク全てを陣営内に取り込むことになり,市場での主導権を握れるからだ。ただ現段階では,CBSは縛られた形でのHuluへの参加を嫌がっており,Huluを複数ある配信チャンネルの一つとして利用したいようである。CBSは現在,自前のTV.comの他に配信チャンネルとして100を超えるサイトで展開しており,配信チャンネル拡充によるリーチ拡大に力を入れているのだ。つまり,CBSとしてはコンテンツの流通に関しては制約を受けずに自由にコントロールしたいのである。

 Huluに仲間入りしたDisneyにしても同じである。ABC TVやDisney映画のコンテンツ流通をHuluに任せるわけではない。また,YouTubeやiTuneのような有力な配信チャンネルも今後とも利用したい。ストリーム形式の動画のフル配信にはHuluに,同じストリーム形式でも短い動画配信をYouTubeと,使い分けすることになるのだろう。ABC TVの人気番組“LOST”などはHuluでフルコンテンツを視聴できるようになるのでは。一方でYouTubeには,ABC TVチャンネルやESPNチャンネル(ABCのスポーツ部門)が既に開設されている。HuluもYouTubeもコマーシャル付きで無料サービスとなるが,有料のダウンロード販売にはiTuneを利用していくことになりそう。

DisneyとしてはHuluへの加入により,新しいユーザーを積極的に開拓していこうとしている。これまでABC TVの動画コンテンツのオンライン配信は,自前のサイトのABC.comで行うようにしていた。冒頭のNielsenの調査データのように,HuluとABC.comはユニーク視聴者数で競う関係にあった。でも自前サイトの配信だけでは発展性がない。ABC.comは中高年層ユーザーが多く、男性比率がかなり低い。逆にHuluは若年層ユーザーが比較的多く,男性比率が高い。つまり,ABC.comでは取り込めなかった新しいユーザー層に,Huluの配信チャンネルを介してリーチできる可能性が高いのだ。

 ここしばらくは,オンライン動画サービス市場でYouTubeとHuluの戦いが激しくなるのは間違いない。YouTube は長時間のフル配信サービスに乗り出しているし,逆にHuluは短時間の音楽ビデオ配信に力を入れようとしている。また,サービス地域を米国内に限定しているHuluは,YouTubeのようにグローバル市場への展開を目指しており,そのための布石を打ちだしている。

 オンライン動画サービスがユーザーの望む形で享受できるようになろうとしている。同じ動画コンテンツでも,コマーシャルが付くが無料で視聴できたり,有料だがコマーシャル抜きで視聴できたり,さらにはダウンロードでコンテンツを購入できたりするのだ。


◇参考
・YouTubeキラーの“Hulu”,放送からオンラインTVの流れを加速化(メディア・パブ)
・Like minds( Hulu Blog)
・Disney Climbs Aboard Video Site Hulu, Teaming Up With Other Networks Online(WSJ.com)
・Top 10 Online Video Streamers for March(Marketing Chart)
・Hulu Continues Ascent in U.S. Online Video Market, Breaking Into Top 3 Properties by Videos Viewed for First Time in March(プレスリリース)
・Hulu Loses Minutes(Light Reading)
・What Disney-Hulu Means for Apple(BusinessWeek.com)
・YouTube、膨れ上がる赤字(メディア・パブ)
・インドの映画や音楽ビデオも無料オンラインストリーミング提供へ(メディア・パブ)
タグ:Hulu ビデオ YouTube

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posted by 田中善一郎 at 12:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
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