ある程度は覚悟をしていたものの,状況は悪化する一方で,やはりひど過ぎる。米国の新聞社は,広告売上に大きく依存している。今でも平均で総売上の7割近くを広告に頼っているはずだ。その広告売上が次表のように急降下しているのである。2009年第1四半期の総広告売上(新聞紙広告+オンライン広告)は66億ドルで,前年同期比でマイナス28.28%と落ち込んだ。特に関係者にとってショックだったのは,オンライン広告までが同13.4%減と2ケタ台のマイナス成長になったことである。これからのけん引役をオンライン事業に期待したのに。
米国の広告市場は季節要因で,第4四半期がいつも大きく膨らむ。そのため広告市場の趨勢は,以下の表のChange(四半期別売上の前年同期比)を見た方がわかりやすい。Changeのデータを追っていると,まるで底なし沼に沈んでいくようでもある。
●米新聞の広告売上(四半期別)
(ソース:NAA)
次の表は,主要カテゴリの広告売上の推移である。
●主要カテゴリーの広告売上(四半期別)
(ソース:NAA)
こうした惨状に陥ったのは100年に一度の経済危機のせいで,仕方がないという見方もある。だが,必ずしもそうでない。上の表からも明らかに,サプライム問題が顕在化する前から新聞の広告売上は急降下していたのだ。実は,読者減に伴う広告売上減が数年前から始まっていたのである。新聞社は構造的な問題を抱えていたのである。ただ,今回の大不況の襲来で,前倒しで経営破綻する米新聞社が増えたのも確かである。
でも,新聞社が抱える構造的な問題は肥大化しており,景気が回復しても米新聞社が復活するシナリオが見えてこない。これは,新聞だけではなくて雑誌,テレビなどの伝統メディア産業も同じような状況に置かれている。一方で,ニュースや動画などコンテンツニーズが減っているわけではない。だが,最近のコンテンツニーズに,伝統メディア企業が応えていない。というか,構造的に応えるのが難しいということか。