イラン大統領選挙直後の手ぬるい報道カバーをTwitter(#CNNFail)により手厳しく批判されていたCNNだが,1週間後の今や,イラン騒乱ニュース報道では独走する勢いである。
今朝(日本時間21日早朝)のCNN.comのトップページを以下に掲げる。イラン現地からの写真や動画がトップを飾っていた。その多くが,イラン市民が撮った生々しいコンテンツである。記事も市民ジャーナリストの話に頼っている部分が少なくない。

CNNがこのように市民ジャーナリズムを取り込めたのも,実は秘密兵器が備わっていたからである。昨年春から,ユーザーからの投稿コンテンツを取り込む仕掛けとして,CNN.com(CNNのドメイン)の外にiReport.comを開設していたのだ。iReportは,ロゴで“Unedited. Unfiltered. News.”と告げているように,投稿コンテンツが他人の手で編集されたり選別されることはない。YouTubeと同じように,ユーザーが投稿した記事や写真,動画などはそのままiReportに掲載されていくのだ。そのため,これまで32万件以上のユーザー作成コンテンツ(UGC)が投稿されてきた。CNNは,iReportのUGCの中から“Edited. Filtered.”(選別)したコンテンツだけを,CNN.comやテレビ放送で採用することにしていたのだ。
今回のイラン騒動では,マスメディアに対して取材活動に規制が課せていたので,ソーシャルメディアの協力が欠かせなくなっていた。iReportはまさにソーシャルメディアそのものであるのだから,CNNがiReportをフル活用したのは言うまでもない。CNNによると,6月13日から17日の間に,イランから1600件のUGCがiReportに投稿されたという。そのなから選ばれた多くの動画や写真,それに記事が,CNN.comやCNNテレビに使われたのだ。
iReportのトップページのスナップショットを以下に載せておく。右下のサムネイル静止画で赤文字のラベル「ON CNN」が貼られている作品は,CNN.comやCNN TVで採用されたものである。

6月12日から21日の間に,市民から投稿されたコンテンツの120本近くが,CNN.comやCNN TVで登場している(一覧表はこちら(Unrest in Iran)で)。この120本には,イラン以外での反政府集会などのコンテンツも含まれている。ともかく,CNN.comやCNN TVのイラン関連ニュースでは,こうしたアマチュアが投稿した写真や動画のオンパレードである。日本のテレビニュースでも同じ動画を見かけるが,CNNからの流用なのかもしれない。
次に,iReportに最近投稿された動画を,以下に貼り付けておく。
*The battle, Iran Protest, Iranian Revolution, !!!!
*Helpless woman attacked and hit by the baseej forces
上の2本の動画は,いずれもビルからの隠し撮りと思われる。街頭でケータイで撮っていた市民が連行されたというニュースもあることから,撮影には注意を払っているようだ。そこで,次のようなビデオペンの紹介動画までも投稿されていた。
改革派(反政府派)の市民からの投稿コンテンツが殺到する理由は明らかである。iReportに投稿したコンテンツが選別されれば,世界トップレベルのニュース専門TV(CNN TV)やニュースサイト(CNN.com)を介して,世界の多くの人に視聴されたり閲覧されるからである。動画や写真などのコンテンツでイランの現状を知らせることにより,人権問題に敏感な米欧諸国がイラン政府に圧力をかけてくれることを期待しているのだろう。
◇参考
・#CNNWin? iReport Gets a Boost from #IranElection Protests(Mashable)
・CNN: We're Big In Tehran Too!(Silicon Allay Insider)
・Twitter,イラン騒乱でソーシャルメディアの主役に(メディア・パブ)
・市民ジャーナリズムの危うさを露呈(メディア・パブ)
・Reading Twitter in Tehran?(washingtompost.com)
・Twitter on the Barricades in Iran: Six Lessons Learned(NYTimes.com)
・At least 19 dead in Iran unrest, hospital sources say(CNN.com)