NYTimes.comのコンテンツ(ブログやマルチメディアも含む)をアクセスする際に月間5ドルを課した場合に,NYTの現読者が払うかどうかをアンケート調査しているという。また,NYT紙読者に月間2.5ドルの割引料金を用意した場合の反応も調べている。
オンライン版の有料化で,収支が本当に改善されるのだろうか。有料化によりオンライン販売が新たな増収となるが,一方でオンライン読者が少なくなってオンライン広告売上が減収となるだろう。
そこでSilicon Allay Insider(SAI)は,次のように試算している。
NYTimes.comのユニークユーザー数(米国)は,Competeによると1500万人であるが,無料であるから利用している者が多いのは否めない。有料化の壁を設定した場合でも,どれくらいのユーザーが購読料を払ってまでアクセスするかである。SAIでは,少なくとも100万人くらいは払うだろうと予測している。ただし,Times Select(2007年秋まで実施していたNYTimes.comの有料サービス)の購読者数(web-only)が22万人程度であったことを参考にして,今回の有料サービス利用者を75万人と少なめに見積もって試算している。ただしオンライン版の年間購読料は80ドルとした。
この前提で計算すると,
6000万ドル=75万人×80ドル
がオンライン販売の増収分となる。
次は,オンライン広告売上への影響である。NYT社のオンライン広告売上は年間にして約3億ドル(3Qが7500万ドル)。そのうちAbout.comの広告売上が年間1億ドル程度なので,残り2億ドルの大半がNYTimes.comからの売上となるはず。少なくとも,NYTimes.comのオンライン広告売上は年間1億5000万ドル〜1億7500万ドル程度であろう。
有料化の壁が設定されることにより,どれくらいのユーザーが去っていくかが大きな問題となる。SAIでは,月間ユニークユーザー数が半分以下に落っこちると推定している。広告売上がユニークユーザー数に比例するとすれば,2億ドルの半分,つまり1億ドルが減収となってしまう。
この試算では,オンライン販売収入が6000万ドル増えても,オンライン広告売上が1億ドルも減ってしまっている。つまりオンライン版の有料化により,収益が悪化することもありうるのだ。
ただ,この試算はかなり大雑把である。有料化の壁の設定の仕方によって,シミュレーション結果がかなり違うはず。ブログや動画コンテンツを含めて,現在のNYTimes.comのほとんどのコンテンツを有料化にしてしまうのか。あるいは,WSJ.comのように仕事に関するコンテンツだけを有料にするが,それ以外の一般記事は無料のままとするかである。
ソーシャルメディア化で先行してきたNYTimes.comが,有料化の壁を設けて逆行の道を歩むのだろうか。オンライン版の有料化がばくち的な危険性を抱えていることは間違いない。
◇参考
・New York Times Considers $5 Monthly Web-Access Fee (Update2) (Bloomberg)
・New York Times Considers Charging $5 Per Month For Access To NYT.com (NYT)(Silicon Alley Insider)
・Dear New York Times: Please charge me more than $5 for your web site.(The Nieman Journalism Lab)