ニューズのコンテンツの目玉は,もちろんウォールストリート・ジャーナル(WSJ)。マイクロソフト(MS)としては,WSJの記事を検索できるのはBingだけとアピールして,検索市場で独走するグーグルに対抗していきたいのだろう。
メディア企業のコンテンツをタダで利用して検索事業で大儲けしていると,マードックはグーグルを泥棒呼ばわりしていた。そこで、システム的にニューズのコンテンツをグーグルの検索エンジンで引っかからないようにしてしまいたいそうな。一方の提携するMSには,WSJなどのコンテンツを優先的に提供し,Bingで検索できるようにしていく。でも話の筋からして,ニューズはMSにコンテンツをタダで提供するわけにはいかない。MSはコンテンツ利用料をニューズに支払うことになる。
では,MSはニューズにいくらぐらい支払うのだろうか。MSが検索したいコンテンツは,実質的にはWSJ.comである。そのための支払額は,Silicon Alley Insiderによると年間1500万ドルと予測している。
Silicon Alley Insiderは年間支払額を次のようにはじいた。Hitwiseのレポートによると,WSJ.comへのトラフィックの25%がグーグルサイト経由からとなっている。WSJ.comの記事をグーグルが検索できなくする措置を取ると,その25%のトラフィックを失うことになるのだ。WSJ.comのトラフィックが25%減ることにより,広告売上が10〜15%減ると見積もっている。WSJ.comの広告売上高は1億ドル程度と推定しているので,1000万ドル〜1500万ドルの売上が消える計算になる。
グーグルに対してWSJ.comコンテンツの検索を禁止させて,それに合わせてMSに独占的に検索を認めるとなると,そのためWSJ.comが被る1000万ドル〜1500万ドルの損失を少なくともMSが補うべきと,Silicon Alley Insiderは見ているのである。
ところで,グーグルはWSJ.comのコンテンツが検索対象から外れることで打撃を受けるのだろうか。たとえ直接の検索対象から除かれても,WSJ.comの記事は完全にブロックされないのでは。ブログやツイッターを介してグーグル検索でも引っかかるはず。また,有力な新聞サイトやニュースサイトが,グーグル検索から離れてMSのBingに一斉になびくことはあり得ないであろう。
以下のHitwiseの調査からも明らかに,グーグルサイトは新聞サイトに大量のトラフィックを供給している。一方のBingが運んでくれるトラフィックはまだわずかである。グーグル検索を切ってBingに検索用のコンテンツを提供すればMSがコンテンツ提供料を支払うと誘っても,それに応える有力新聞サイトはほとんど現れないのでは。グーグルと友好関係のあったNYTとかReutersが応えるとは考えられないのだが。

(ソース:Hitwise)
◇参考
・News Corp. Joined by Rivals Weighing Google Block (Update2)(Bloomberg)
・News Corp. - If You de-Index Will They Still Come?(Experian,Hitwise)
・WSJ Could Ditch Google For $15 Million From Microsoft (MSFT, GOOG, NWS)(Silicon Alley Insider)