Nielsen Onlineが毎月公表する月次のニュースサイト・ランキングで,2009年12月のNYTimes.comの月間ユニークユーザー数が前年同月比マイナス18.4%の1485万人に減り,ランクが7位に落っこちた。通常,5位あたりで新聞サイトのトップを走っていたNYTimes.comが,12月にTribuneに抜かれて,新聞サイトのトップの座から引きずり降ろされたのだ。Tribuneが単独新聞でないにしても,新聞サイトのトップ交代は新聞業界者にとっては見逃せない出来事である。一方で,少し前までは10位以下に甘んじていたGoogle Newsが同26.1%も増え,8位に這い上がってきたのも注目される。
*米ニュースサイトのユニークビジター数ランキング(2009年12月,米市場,Niesen Online))

ここでやはり気になるのが,NYTimes.comのユニークユーザー数が減ってきていること。同サイトは2011年1月の有料化実施を決定しているだけに,なおさらだ。新聞サイトの有料化では,なるべく多くの有料購読者を獲得することと,オンライン広告売上を減らさないように(できれば増やすように)していかなければならない。
NYTimes.comを訪問し無料で利用しているユーザーのうち,何割の人に課金サービスを利用させるかがカギとなる。だが潜在顧客となる無料利用者が12月データのように減っていくと,有料購読者数にも悪影響を及ぼすし,ページビューに左右するオンライン広告売上も減る心配が出てくる。
ここでNYTimes.comと同じく質の高い新聞サイトと見られているwasingtonpost.comについて,興味深いデータをMonday Noteで見つけたので,紹介しておく。
washingtonpost.comの2008年の年間オンライン広告売上が1億2270万ドルであった。月間のユニークユーザー数が1100万人(ここでは年間のユニークユーザー数も同じとする)なので,ARPU (Average Revenue per User) が11ドルである。ワシントンポスト紙のARPUに比べて20分の1と低い。オンラインビジネスの厳しさを実感する数値だ。
だからこそNYTimes.comでは,オンライン広告売上に加えて,有料化によるオンライン販売売上を第2の収益源として期待しているわけだ。ところで,NYTimes.comやwashingtonpost.comのような有力新聞サイトでは,サーチエンジン経由の来訪者が多い。ユニークユーザーの3分の1がサーチエンジン経由とされている。サーチエンジン経由で訪れるような一元客は有料サービスの対象と見るべきではないとの意見が多い。
もしwashingtonpost.comが有料化に踏み切ったとしても,ユニークユーザー数1100万人のうちの66.6%,つまり734万人が有料課金サービスの潜在ユーザー数となる。もし,NYTimes.comと同じメータ課金方式を採用したとして,月間購読料を2ドル,4ドル,6ドル,8ドルを想定した場合で,潜在ユーザーのうち有料サービスを利用する割合(conversion)によってオンライン売上がどれくらい増えるかをシミュレーションした結果が次のようになる。月間購読料を2ドル〜8ドルと想定したのは,Boston Consulting Groupのユーザー調査を参考にしたため。

たとえば,月間購読料金を6ドルのフラットに設定した時に,潜在ユーザー(734万人)のうち10%が有料課金サービスを利用したとすると,総売上高(オンライン広告売上+有料課金売上)が43%増えることになる。
大雑把なシミュレーションであるが,NYTimes.comも似通った傾向を示すと言いたいようだ。ここではオンライン広告売上は減らないとしているが,課金の壁(Pay Wall)によってトラフィックが大幅に減り,それに伴いオンライン広告売上が下落する心配がありうる。washingtonpost.comが有料化に走らずに無料のままで運用していけば,2011年1月からNYTimes.comを利用していたユーザーがドッとwashingtonpost.comに流れるかもしれない。
ただし,NYTimes.comもトラフィックを減らさない手を打つはずだ。メーター料金制で毎月何本かの記事を無料閲読できるようにするし,WSJのようにブログなどの人気記事を無料開放する可能性がある。特にNYTimes.comはソーシャルメディアとの連携を最も先行して進めてきた新聞サイトだけに,外部のソーシャルメディアとの連携を切り捨てることは難しい。実際,外部サイトのユーザーが,Googleなどの検索エンジンやFacebookのようなSNSで特定したNYTimes.comの記事は,無料で閲覧できるように考えているようだ(WSJでも,Googleなどの検索エンジン経由で有料記事をタダで閲読できる裏口手法があった)。
NYTimes.comの有料化は「フリー」から「フリーミアム」モデルへの移行でもあるだけに,conversionの5%ルールとか10%ルールとかが働くとすれば,やはり無料のユニークユーザー数をできる限り多く確保しておかなければならない。それが減り始めているとすると,有料化事業にも暗雲が。
◇参考
・Update: Upset in Top 10 New Web Sites as Tribune Newspapers Leapfrog 'N.Y. Times' (Editor&Publisher)
・Q.&A. on NYTimes.com(NYTimes.com)
・Talk to The Times: Answers About Charging Online(Media Decoder,NYTimes.com)
・'NYT' Meter Model More Likely to Affect Ad Rates (Editor&Publisher)
・Behind the NY Times Pay Wall(CBSNEWS)


