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その中で,"Available at booksellers everywhere except Amazon."とのメッセージが掲げらているではないか。アマゾン以外のどこの書店からでも書籍は購入できますよとのことである。アマゾンの行動に対するマクミラン社の怒りがまだ収まっていないようである。
Kindleを武器に先行していたアマゾンが,電子書籍市場で主導権を握りつつある。ところがアップルが,先月末に発表したiPadで強力な対抗馬としてのし上がろうとしている。一方で出版社は,電子書籍の流通でアマゾンやアップルのようなIT/ネット企業に主導権を握られ,価格決定権を奪われようとする動きに,苛立っていた。
すでにアマゾンのネット書店は,紙の書籍だけではなくてKindle向け電子書籍の販売価格も事実上コントロールしている。さらに最近,電子書籍の販売価格を9.99ドルに設定し,どの競合書店よりも安く販売する出版社には,販売価格の70%近くを分配するとアマゾンが発表したばかりである。70%印税は出版社にとって一見オイシイ話のように思えるが,アマゾンに販売価格をコントロールされることになる。また割高になる紙の書籍の売り上げが大きく減る心配もある。アマゾンとしては,この70%印税プランで出版社を囲い込んでしまい,アップルのiPadの出鼻をくじく腹積もりであったのかもしれない。
アマゾンの安売り戦略に対し,ついに反旗を翻した最初の出版社が現れた。それがマクミランであったのだ。12.99〜14.99ドルの価格帯でKindle向け電子書籍を売りたいとアマゾンに提示した。これに対し,アマゾンは同社のネット書店で,マクミランの紙の書籍とKindle版電子書籍の両方の取り扱いを中止するという強硬手段に打って出たのだ。巨大なアマゾン書店での販売依存を高めてきている出版社にとって,取扱い中止は痛い。
だが,アマゾンも強硬な対応を取り続けられない背景がある。アマゾンがほぼ独占していた電子書籍市場に新規参入してきたアップルが,iPad向け電子書籍の販売価格を12.99ドルか14.99ドルのどちかに設定するよう出版社に要望していたからだ 。Appleは出版社に柔軟な対応で臨むことになろう。
このためアマゾンが,マクミランの書籍の取り扱いを再開し,そして最終的には電子書籍の販売価格の引き上げに対しても譲歩することになるだろうと述べたのである。それにもかかわらずアマゾンのネット書店では,マクミランの書籍(ハードカバー版書籍と電子書籍)の購入ボタンがまだ働いていなかったのだ。
そこで怒ったマクミランがNYタイムズに全面広告を掲載したのである。 書籍"The Checklist Manifesto,"( Atul Gawande著)の広告となっており,この書籍が米国の主要新聞でベストセラーとして紹介されていることを伝えている。そしてこの書籍がアマゾン以外のどの書店でも購入できることを強調していたのだ。先ほどアマゾンのネット書店を覗くと,この書籍が売られてはいた(購入ボタンが有効かは確かめていないが)。
Kindle版電子書籍の販売価格値上げに関するマクミランの動きに,HachetteやHarperCollinsなどの大手出版社も同調しようとしている。電子書籍の流通をめぐる主導権争いがこれから本格化する。
追記(2010年2月7日):
NYタイムズ紙の全面広告の成果か,米国時間の5日夕方にマクミランの書籍がアマゾン書店で購入できるようになった。NYTimes.comの人気ブログBitsの5日付記事“Macmillan Books Return to Amazon After Dispute”が,1週間近く続いた「アマゾン対マクミラン」の論争に決着がついたと伝えている。詳細はまだ明らかではないが,電子書籍の標準価格は9.99ドルとしながらも,新刊書やベストセラーのKindle版電子書籍は14.99ドルでの販売を認めることになったようだ。
ただし,Reuterの記事(2月6日)によると,“Amazon reshelves Macmillan titles but not e-books”となっており,6日現在,マクミランの電子書籍はアマゾンでは購入できないようだ。
◇参考
・Macmillan NYT Ad: "Available at booksellers everywhere except Amazon"(Gallycat)
・Amazon-Macmillan fight heats up(TechFlash)
・Announcement:Macmillan E-books(Kindle Community,Amazon.com)



でも、時代の趨勢なのでしょうか、書籍というものはいずれ電子化という波に押されて、小さなメモリスティックに収まっていく事になっていくんでしょうね。