ここ数年,オンラインサービスはグーグルが主役であった。少なくとも米国や欧州では,ネットユーザーの多くがググることからスタートして,目的サイトにアクセスしている。そのためネットビジネスを展開しているサイトも,グーグルの検索エンジン対応のSEOが欠かせなかった。
ネット・トラフィックの流れを,ほとんどグーグルが仕切っていたのである。ところがこの半年近くの間に,その流れに異変が起こったのだ。急成長を続けるフェースブックが,ネット・トラフィックの主流にのし上がろうとしているのである。
その異変を伝える衝撃的なレポートがCompete社から出た。そのレポートによると,YahooやMSN,AOLのようなポータルサイトへのトラフィックの流入元が,検索エンジンよりもSNSが多くなってきたのである。
09年12月のトラフィック調査によると,YahooやMSN,AOLへのWebトラフィックの15%が,フェースブックとマイスペースからであった。内訳を見ると,フェースブックが13%でマイスペースが2%である。そして驚くのは,主要ポータルサイトのトラフィックのうちGoogleからがわずか7%しか占めていないことである。7.61%を占めるeBayよりも少ないのである。
Webトラフィックの発信元の主役が,検索サイトからSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)へと変わろうとしているのだろう。欧米では,検索市場はグーグルが独占しSNS市場はフェースブックが独占している。つまり,ネットの主役が,グーグルからフェースブックに交代していくのかも。
どうして,このような現象が発生したのだろうか。ショッピングをしたり情報を収集するときに,これまではグーグルなどの検索エンジンで目的(destination)サイトを探していた。だが,最近は変わってきた。SNSでショッピングからニュースまでのあらゆる情報を,友人や家族との間で共有するようになってきた。友人や家族の行動を参考にして,アクセスする目的サイトを選ぶようになっているのだろう。機械的な検索エンジンの結果よりも身近な知り合いの意見を重視し始めている。
目的サイト側も,検索エンジン対策だけではなくて,SNS対策にこれまで以上に力を入れ始めている。たとえば,税金申請ソフトのTurboTaxもフェースブック上で,プログラムのレビューを伝えたり税金申請の疑問に答えている。TurboTaxの2000万ユーザーの半分がフェースブック会員で,それぞれ平均して150人の友人と情報を共有している。
また一般ユーザーが,ネット接触時間のうちオンライン検索に費やする時間は5%程度である。残りの95%の時間を目的サイトで費やする。目的サイトとしてのファースブックの勢いも見逃せない。ユーザー数がこの1年間で2倍になったが,各ユーザーの平均滞在時間が2倍にもなっている。
このような検索エンジンからSNSへの流れの動きに,グーグルもあせりを隠せない。グーグルの2009年・年次報告の中でも,競合者として名指しでフェースブックを挙げていた。「Google Buzz」を立ち上げたのも,フェースブックの流れを阻止し,SNS機能を取り込みたいからである。
◇参考
・Facebook Now Responsible For Majority Of Web Portal Traffic(All Facebook)
・Facebook directs more online users than Google(SFGate)
・Facebook Sent More Traffic to Yahoo & MSN Than Google: Is It Bad SEO?( Search Engine Roundtable)
・Google Sees Facebook, Amazon, Kayak As Competitors(DOW JONES NEWSWIRE)