iPad版電子新聞で、最もダウンロード数が多かったアプリが、“USA Today for iPad”である。4月3日のiPadの売り出しに合わせて発行されたが、5月16日までに371,213回もアプリがダウンロードされ、ニュース分野のiPadアプリではトップとなったようだ。
このUSA TodayのiPad版電子新聞にはスポンサーとしてCourtyard Marriottが付き、7月4日までアプリが無料となっている。その後は有料に切り替わる。このiPadアプリの電子新聞で話題になったのは、Marriott広告のCPM(広告が1000回表示されたときの広告単価)が50ドルと、思っていた以上に高い広告料金に設定されたことだ。ほぼ同じ内容のWebサイト(USA Todayのニュースサイト)ではCMPが10ドル以下なので、iPadアプリでは5倍以上に広告料金が跳ね上がったことになる。
以下に、昨日のUSA TodayのiPadアプリとWebサイトのスナップショットを示す。
*iPadアプリ(USA Today for iPad)
Webサイト(www.usatoday.com)
iPadアプリの電子新聞ページの最後部にMarriottのバナー広告が現れている。このiPadアプリの広告が、どうしてWebサイトよりも5倍以上の料金に設定できたのだろうか。先行のiPad版電子新聞の広告として注目されたことと、さらにシングルスポンサーであったことが効いたのだろう。iPad版電子新聞に出稿したMarriott広告の話は多くのメディアで報道されたりしたので、効果的な広告となったようだ。ただ、今後もWebサイトの数倍以上の広告料金を設定できるかどうかは、今後の成り行き次第である。iPadアプリの広告料金を高く設定する理由の一つとして、iPadアプリの閲覧時間がWebサイトより長くなるからと主張されているようだ。iPadアプリの電子新聞は新聞紙のようにパッケージされた形で提供されるので、閲覧時間が長くなることが期待されている。一方Webのニュースサイトでは、いろんな調査からも明らかなように、ユーザーがザッピングするかのように接するため一般に閲覧時間は短い。また、iPadアプリの広告では、広告スペースが限定されるし、クリック率が高くなるとの報告もされている。
このUSA TodayのiPadアプリの広告で興味深かったのは、広告料金がCMPベースで議論されていることである。新聞紙のようにレートベース(保証する部数)で広告料金を決めていないようだ。上のMarriottの広告例では、バナー広告をアドサーバーから配信し、広告表示回数を計数しているのではなかろうか。無線回線をオフにすると、広告が消えることがあった。
ところでUSA Todayとしては、iPadアプリビジネスの本番は、有料化に切り替わる7月以降である。USA Today紙の部数が急減しているだけに(こちらを参照)、iPadアプリのようなデジタル版に活路を見出したいところ。ここで難問が持ち上がる。iPadアプリの有料化に合せてWebのUSA Todayサイトをどう位置づけるかである。月間ユニークビジター数が1000万人前後で、米国の新聞社サイトではトップ3前後と頑張っているだけに、Webサイトを有料化するのは難しい。USA Todayのような一般ニュースサイトを有料化すれば、ユニークビジター数が激減するのは避けられないだろう。それに伴い、せっかくリバウンドしてきているインターネット広告売上が
ただし、Webサイト(USA Todayのニュースサイト)をこれまでのように無料で閲覧させていると、有料のiPadアプリの購読者の獲得が難しくなるだろう。上のWebサイトのスナップショットのように、iPadでもUSA Todayのニュースサイトが閲覧できるからだ。
◇参考
・Publishers see signs the iPad can restore ad money(AP)
・iPad advertising datapoint of the day(Reuters)
・USA TodayのiPadアプリ、現在の無料が7月から有料に(メディア・パブ)
・米新聞の発行部数、前年並みのWSJを除けば総崩れ(メディア・パブ)