下のグラフのように、有料化前(pre-paywall) の2010年第2四半期のユニークビジター数は310万人であった。有料化後(post-paywall) の2010年第3四半期には、ユニークビジター数が178万人に減った。有料化前のビジター数の58%である。さらに、paywallの中のコンテンツ、つまり有料コンテンツを閲覧したユニークユーザー数は36万2000人となった。第3四半期にサイトに訪れたユーザーの5人に1人が有料コンテンツに接したことになる。

注:英国の家庭や職場から利用しているユーザー数。英国外からのユーザーは対象外。またケータイやインターネットカフェ、空港などからのユーザーも対象外。
ところで、有料コンテンツを閲覧した36万2000人の実態は? 実際に購読料を払った新規有料ユーザーの他に、新聞紙読者や無料試読のようにオンライン購読料を払っていない人が含まれている。オンライン購読料を払っているユーザーはそんなに多くないのでは。
また、paywall内のコンテンツにアクセスしないで、第3四半期にサイトに訪れたユニークビジター(142万人=178.2万-36.2万)は、どういうユーザーか。こうしたユーザーは、the Timesのトップページしか閲覧できない。以下のような目次ページだけである。

目次にある記事見出しなどをクリックすると、すべて以下のようなpaywallで遮られる。

the Timesのトップページは潜在読者に向けての、宣伝ページのようなもの。もちろん広告などは掲載していない。徹底してすべてのコンテンツをpaywallの中に置き、金を払わない人には一切記事本文を閲覧させない方針。Googleの検索エンジンからも事実上検索できない。
同じマードックの新聞であるWSJサイト(WSJ.com)とは、有料化手法が大きく異なる。WSJ.comでは、一般記事を中心に、無料で閲覧できる記事が多い。NYTimes.comとの対抗上、無料記事が増える傾向が見られる。また有料記事でも、ソーシャルメディア界隈で話題になりそうな記事なら、期間限定で無料アクセスを許している。さらに、裏技でGoogleの検索エンジン経由で有料記事を無料で閲覧できる道を残している。
新聞サイトの有料化を議論する場合、WSJやFTのような金融専門紙サイトは別格である。専門サイトが成功したからと言って、大半の一般紙サイトはうまくいかないだろう。でも、多くの人からクオリティーペーパーと認められているNYTimesやThe Times(London Times)なら、サイトの有料化が成功するかもしれない。というか期待を抱きたい。
その意味で、the Timesサイトの有料化の成否は注目される。それを判定するには、
・新規オンライン有料ユーザー数は?(新規のオンライン購読売上はどれくらい)
・オンライン広告売上げは?(どれくらい減ったか)
・新聞紙読者数は?(新聞紙読者がオンラインに流れ、減っていかないか)
・新聞紙広告売上げは?(新聞紙読者減による新聞紙広告売上への影響は)
を知りたい。
なんとなく、厳しそうな予感がするのだが。
◇参考
・Nielsen estimates 362,000 Britons behind the Times paywall(nilsenwire)