スマートフォン専用ページを表示

メディア・パブ

オンラインメディアをウオッチ
<< 「伝統ニュースメディアは10年後に消えている」と米国成人の過半数が信じている | TOP | Blommberg、年間購読料2000ドルのニューズレター4タイトルを発行 >>
2010年10月31日

Newsweek誌のiPadアプリ、安価な定期購読を提供

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 厳しい状況が続くニュース週刊誌の「Newsweek」。売却された後も泥沼から抜け出せないでいるが、ワラをもつかむ気持ちで期待しているのが電子雑誌。そこで電子雑誌の一部売りをiPadアプリで提供していたが、先週から定期購読のiPadアプリも始めた。

 これまで、雑誌社が既存雑誌(紙)の電子版をiPadアプリで提供する場合、AppStoreでの一部売りが前提になっていた。Appleは電子雑誌の課金を含む販売代理すべてをAppStoreで実施すことになっている。雑誌社からすれば、定期購読までAppleの管理下に置かれることを非常に嫌っていた。米国の多くの雑誌は、一部売りよりも定期購読に頼っており、定期購読者の個人情報は手元に置きたいからだ。

 Newsweek誌の場合、2009年の有料購読部数が前年比14.85減の232万部と落ち込んだが、それでも定期購読部数が225万部もあった。一方のニューススタンドで一部売りされる部数は、わずか6万4000部であった。以下のように、定期購読の場合の一号あたりの価格は、ニューススタンドの一部売り価格の数分の一以下である。読者は年間購読料として40ドル程度払っておれば、毎週、郵便受けに最新号が送られてくる。一号あたり約70セント(60円以下)である。多くの読者が、定期購読になびくのは当然かも。雑誌経営も、200万人以上の安定した定期読者向けの広告収入に頼っていた。 

*Amazon書店におけるNewsweek誌(紙)の価格
NewsweekPrice.jpg

 ところで、一号売りするiPadアプリの販売は、いわばニューススタンドのデジタル版のようなもの。iPadアプリの販売価格も2.99ドルと、リアルのニュースタンドでの雑誌とほぼ同じ価格設定にしている。これではiPadアプリを買ってくれるのは、ニューススタンドで雑誌を購入する代わりとしてか。紙の雑誌を定期購読している読者にすれば、2.99ドルは高すぎる。このままでは、iPadアプリの売上部数を増やすのはかなり難しそう。

 そこで、定期購読による割引販売を始めた。12週間(12号分)の定期購読料を9.99ドルに、また24週間(24号分)の定期購読料を14.99ドルに設定したのだ。Appleの購入システムを使って、読者はiPadアプリの定期購読ができるようになる。特に半年(24週間)の定期購読なら、1号あたりの価格が0.7ドルを切る。それに、ニューススタンドに紙の雑誌が現れるほぼ2日前に、同じ号の電子雑誌(iPadアプリ)がダウンロードして得られるだろう。定期購読で配送される紙の雑誌よりも、同じように早く電子雑誌が入手できるはず。これなら、読者は歓迎する。

*AppleのAppStoreにおけるNewsweekのiPadアプリの価格
NewsweekiPad.jpg

 ここで日本から定期購読しようとアクセスしてみたら、次のような画面が出てきた。12週間の定期購読料が1200円に、また24週間の定期購読料が1700円と、米国のドル価格よりも割高になっていた。それでも24週間購読を申し込めば、一号あたり約70円と安い。日本の某オンライン書店では、紙のNewsweek誌(英語版)を定期購読しても、6ヶ月間購読で1冊(一号)あたり380円、年間購読で352円、さらに3年間購読でも288円となる。さらに配送に時間がかかる。

NewsweekSubscription20101031.jpg

 このような料金の安さが実現し配送の早さも伴えば、それだけでも電子雑誌は魅力的だ。Appleのアプリ購入システムを使って、安い定期購読が受けられるようになったのは、読者にとっては素晴らしいことである。でも、NewsweekとAppleの間でどのような契約がなされたのかが、もうひとつ分からない。今回の定期購読サービスは、新規に申し込む人だけが対象であるようだ(既存の紙の定期購読者は対象でないようだ)。ともかく、iPad向けの定期購読サービスが軌道に乗れば、米国の電子雑誌ビジネスも離陸に向かうのかもしれない。
 

◇参考
・Newsweek Offers iPad App With Subscription Option(NYTimes.com)
・売りに出たニューズウィーク誌、火の車のニュース週刊誌に買い手が現れるか(メディア・パブ)
・米アップルと大手雑誌社の綱引き、iPad向け電子雑誌を雑誌定期購読者に無料提供へ(メディア・パブ)

この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 23:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 出版 雑誌
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
Powered by Seesaa
Seesaaブログ
新着記事
(10/17)激しく責め立てられる「…
(09/19)動画配信のソーシャル系…
(09/11)SNS上のニュースは不正…
(07/28)勢いが続く「LINE」「In…
(06/30)TVニュースだけではなく…
(06/15)ニュースユーザーのFB離…
(06/01)高年層のSNS利用が増え…
(05/21)金融新聞「FT」までがFB…
(05/06)米ニュースメディアが相…
(04/16)モバイル広告市場を牽引…
(04/10)FBのアルゴリズム変更後…
(03/14)紙の「雑誌ブランド」は…
(02/07)「メディア」も「プラッ…
(01/30)国民の信頼が最も低い米…
(01/21)メディアに好かれる「グ…
(12/21)若いミレニアル世代ほど…
(12/08)世界の全広告費の25%を…
(11/28)デジタル売上8億ドルの…
(09/28)「グーグル」と「FB」が…
(09/07)FBに頼る海外のニュース…
カテゴリ
RSS配信 ブログ(202)
マーケティング 広告(339)
新聞 ニュース(702)
出版 雑誌(319)
TV  ビデオ ラジオ(277)
ポータル サーチエンジン(179)
メディア(94)
ケータイ モバイル(115)
市場(144)
その他(47)
日記(1)
Web2.0 SNS CGM(312)
ネットワーク(30)
ビッグデータ AI(4)
過去ログ
記事検索
 
プロフィール
名前:田中善一郎
E-mail:ztanaka@excite.co.jp
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。