一昨年後半から昨年と、未曾有の広告不況に見舞われたメディア業界であるが、今年に入って回復軌道に乗り始めた。米国の5大メディア(TV、新聞、雑誌、ラジオ、インターネット)のそれぞれの四半期広告売上げは、TV、ラジオそれにインターネットが、今年第1四半期(1月-3月)から順調に前年同期比でプラス成長に入った。ところが、プリントメディア(雑誌と新聞)は構造的な問題を抱えているためか、第1四半期もマイナス成長のままで回復が出遅れていた。でも第2四半期になると、以下のグラフのように、雑誌広告もプラス成長に転換した。
(グラフのソース:REFLECTIONS OF A NEWSOSAUR)
ところが残る新聞広告だけが5大メディアの中でマイナス成長から脱せないでいるのだ。そして先週末に、NAA( Newspaper Association of America)から第3四半期の新聞広告売上が公表されたが、第3四半期も前年同期比で7.1%減と、いまだにマイナス成長のままである。新聞広告だけが、完全に置いてきぼりになった状況だ。
同じプリントメディアである雑誌広告と比較するために、四半期別広告売上げの前年同期比伸び率の推移を以下に示す。雑誌に比べ新聞は悪すぎる。米国の新聞と雑誌の特徴は、売上の大半を広告収入に依存していること。新聞紙の今後が絶望視されているのも仕方がないことか。
*米国の雑誌/新聞の広告売上成長率(2008年第1四半期から2010年第3四半期まで)
(ソース:NAA、MPA)
ついでなので、日本の新聞/雑誌/インターネット広告売上げと比較してみた。米国の新聞広告売上の落ち方は、日本の新聞に比べても大きい。日本の主要新聞は米国の新聞に比べ、広告依存度が低いし、販売売上が多いし、不動産などの資産を抱えている場合もあるし、新聞以外の事業売上も少なくない。日本の新聞も一応大変だ、大変だと叫んではいるが、米国の新聞に比べるとまだ安泰といえる。米国の新聞社ではここ数年、レイアウトの嵐が日常化しているくらい大変なのだ。
*日米のメディア別広告売上(2006年と2009年)
電通の「2009年日本の広告費」
NAA(Newspaper Association of America )より:プリントのみでオンラインは含まず
IAB( Interactive Advertising Bureau )より
MPA(Magazine Publishers of America)
NAAのデータを見れば、米国の新聞の大変さを実感できる。総売り上げの8割前後を占めていた新聞紙広告売上の急落ぶりが悲惨である。そこで救世主としてオンライン広告に望みを託したいのだが、まだ売上規模がまだ小さい。それなのに、そのオンライン広告までも2008年第2四半期から2009年第4四半期までマイナス成長に落込んでしまった。
*米新聞の新聞紙広告売上/オンライン広告売上/総広告売上(2007年第1四半期から2010年第3四半期まで)
(ソース:NAA)
(ソース:NAA)
広告売上げの落ち込みをグラフで見てみよう。2010年第3四半期と5年前(2005年)の同時期の、広告売上高を棒グラフで比べている。5分野別新聞紙広告(Retail、National、〜、Jobs)とオンライン広告である。この5年間で、新聞紙広告はどの分野も大幅に減っている。それれに対して、オンライン広告は少しは増えているが、まさに焼け石に水といったところか。
このように新聞は危機的状況にあるのに、いまだに米国やカナダの少なからぬ新聞社経営者は、新聞の今後を楽観視しているようだ。(Guardianの記事)。2011年は広告売上げが上昇し始めるので、新聞経営者の2割がプリントメディアの新聞にも投資していきたいという。
*新聞紙の分野別広告売上[Retail〜Jobs]とオンラインの広告売上げ(2005年第3四半期と2010年第3四半期)
(グラフのソース:REFLECTIONS OF A NEWSOSAUR)
◇参考
・NAA: Newspapers’ Ad Declines Slim, As Online Struggles To Maintain Growth(paidContent.org)
・Robust ad recovery bypassed newspapers(NEWSOSAUR)
・Newspaper ad optimism in the States(Guardian)
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