新聞社や出版社などのWebからニュースをRSSで配信しているサイトについては,やはり圧倒的に米国が進んでいる。米国では既に,100以上の新聞社サイトがニュースをRSS配信している。片や日本の大手新聞社サイトでは朝日新聞社のアサヒ・コムくらいである。
また米国のニュース配信の特徴は,セグメント化されていることだ。トピックやジャンルに絞ったニュースをRSSリーダで読む場合は非常に効率があがる。washingtonpost.com は125種以上のジャンルに分けて,個別にRSS配信している。FeedsterのTop100で washingtonpost.com - Politics が11位にランクされているが,これは125種近くある中の一つのRSSフィードだけでも11番目の人気を得ていると言うことだ。政治ニュースだけに絞ったRSSフィードである。欧米の有力新聞のRSSフィードではセグメント化するのが当たり前になってきた。一方,日本で珍しくニュース配信しているアサヒ・コムの場合は,すべての分野のニュースを一つのRSSフィードで配信しているだけである。忙しい時には,とても利用する気になれない。
ニュースのRSS配信で大きく先行している米国においても,RSS配信している新聞社サイトや出版社サイトは必ずしも多数派ではない。ほとんどのニュースサイトは広告モデルで運用しているので,RSS配信することにより,ページビューが減ってもらっては困るのだ。だがRSS配信すると,読者はRSSリーダーでニュース見出しや要約を見るだけで多くを済ませるのではと言う懸念がある。また,たとえニュース全文を読むために元のニュースサイトに来てもらっても,目的の一つのニュースだけを見て,事実上サイトを素通りされる心配もある。さらに,これまでトップページから閲覧されることを前提にサイトを設計しているので,そのトップページのページビューも減るかもしれない。
このように,RSS配信は墓穴を掘りかねないと,採用に踏み切れない新聞社サイトや出版社サイトが多いのだ。また,RSSリーダでニュースを閲覧する人がまだまだ少ないことも,RSS採用を時期尚早と足踏みさせている。
だがここに来て,RSS採用へと流れが変わりそうだ。The New York Timesなどが,RSS配信の採用によりサイトのページビューが増えたと発表したことが,追い風になった。RSSリーダによる読者はインターネットユーザーの5%にも満たないかもしれないが,RSSリーダのニュース読者には情報発信力のあるブロガーが多い。彼らがブログでニュースを紹介したり評価すると,そのブログを起点にして,ニュース記事の存在がネット上で一気に広がることが日常茶飯事であるからだ。BlogPulse.comは,The New York Times (188,596), BBC (161,805), CNN (144,560) , The Washington Post (113,417)などの有力新聞社サイト上のニュース記事が.ブログで引用された回数を発表したが, ニュースを引用したブログを読んだ多くの人が,ニュースサイトにアクセスしているのは明らかだろう。
さらに,RSSサーチエンジンをはじめとするRSSアグリゲータ経由でも,RSS配信されたニュースが,より多くの読者に読まれるようになる。ブログに始まりニュースサイトに普及してきたRSSフィードは,今後は企業サイトの情報提供ツールとして一気に利用されそうだ。