●中国のインタネットユーザー数:2010年は11月まで

この巨大なネット空間で展開する各種ネット事業も、すごい勢いで進展中である。Credit Suisseが最近公表した2015年の中国市場予測レポートでも、全産業の中で最も成長率の高い分野としてEコマースを掲げている。
●Credit Suisseの中国市場予測。最も成長率の高い分野としてEコマースを掲げ、2015年の市場規模が2010年比の400%増と予測。

中国産業をけん引するインフラとして、中国政府がインターネットの整備・普及に力を入れているのは間違いない。ところが、インターネットはボーダーレスで開放的なメディアである。さらにweb2.0の流れで各種ソーシャルメディアが台頭し、中国でもインターネットが一般市民や消費者が発言できるメディアとしてすっかり根をおろしている。注目すべきはそうした流れの中で、ネットを介した民主化の動きも目立ち始めていることだ。
でも、中国は13億人超の国民を抱えた社会主義国家である。これまで中国政府と共産党は伝統マスメディアを使って情報を統制してきた。そうしたメディア政策の原則は変わらないだろうが、ソーシャルメディアの出現により一方的な情報統制だけではうまくいかなくなっているのも確かである。
中国には、伝統メディアの流れにある政府系メディアサイト(人民網、新華網など)と新興の商業メディアサイト(新浪網、網易網など)があり、さらに商業メディアの傘下あるいは独自サイトとして、検索、動画、SNS、ブログ、BBS、ミニブログなどの、いわゆるソーシャルメディアが定着してきた。今では、当局の管理下にある政府系メディアサイトよりも、自由な意見が飛び交うソーシャルメディアの人気が高い。最近の世論調査(45万人のオンラインユーザーが回答)結果でも、約80%の人が政府系サイトに不満を抱いている。世論形成でもソーシャルメディアの影響力のほうが大きくなっている。
ただ当局は、尖閣沖事件に絡んだ反日運動への対応にも見られるように、ソーシャルメディアのネット世論を巧みに管理する術を会得してきているようでもある。管理を徹底するためであろう、ソーシャルメディアの運営に外国資本の参入を厳しくしている。Google、Facebook、Twitter、YouTube などの米国の有力サイトを事実上、中国市場から排除しているのもそのためである。
でもブロックされているはずのTwitterが、中国の活動家の間では、100%言論の自由が守られた全国的なプラットフォームとして利用されているようでもある。かように中国のメディアの実態は、なかなか把握できない。そうした疑問に応える書籍「中国ネット最前線-「情報統制」と「民主化」」が発行されていたので、以下に紹介する。インターネットを介した情報統制や民主化の動きを垣間見ることができる。1年前に北海道大学東アジアメディア研究センター主催のシンポジウム「ネットが変える中国、ネットで変わる日中関係加」が開かれたが、それをベースにこの1年間の最新の動きをまとめた書籍である。またシンポジウムの第2弾が今月末に開かれるので、それも末尾に紹介しておく。
中国ネット最前線-「情報統制」と「民主化」
編:北海道大学東アジアメディア研究センター、渡辺浩平
出版社:蒼蒼社
価格(税込):1995円
Amazon.co.jp

目次の一部
・ネットメディアと伝統メディア
・尖閣沖漁船衝突事件をめぐる中国のネット世論と共産党
・言論の自由をめぐる中共改革派老幹部の行動
・中国ツイッターと高まる政治的影響力
・中国ネット社会の立役者の夢と現実
・中国のインターネット統制とそのかいくぐり方
・日本企業はネット世論にどう対処すればよいのか
・中国におけるインターネット利用の実態調査
・ネットは対外宣伝の武器となりうるのか
このほかに、中国ネットへのアクセス法やネット関連データ集もまとめられている。
また、北海道大学東アジアメディア研究センターは今月31日に、国際シンポジウム「中国の影響力拡大と日本−政治体制改革とメディアの越境−」を経団連会館国際会議場で開催する。
日時:2011年1月31日(月) 14時30分〜17時15分
場所: 経団連会館 国際会議場(東京・地下鉄大手町 直通)
参加費:無料(事前申し込み制)
定 員:250名(先着順)
プログラムと申し込み法はこちら(http://ceams.imc.hokudai.ac.jp/blog/event/110131shimpo)で。
◇参考
・Survey: Chinese gov't websites fall short( People's Daily Online)
・中国でブロックされたはずのTwitter,海外サービス部門の人気投票でトップに(メディア・パブ)
・China police use micro-blogs 'to connect with public'(BBC)
・450 million use the Web(China Daily)
・China has over 450 million internet users and will have 718 million in 2013(Next Big Future)
・The Biggest Winner In China In 2015? E-Commerce(Forbes)