ネットワーク時代の国家や企業などの組織は、オープン化やフラット化がますます進み、情報は独占から共有へ。そして情報を誰もが手軽に発信でき、しかも一気にグローバルに伝播するようになってきた。国や企業などから国民や消費者へのパワーシフトにも拍車がかかる。こうしたネット環境下でウィキリークスが出現してきたのは当然かもしれない。さらに、これからのメディアの在り方、さらにジャーナリズムの在り方も大きく変わろうとしている。
すでにメディア自身が動き始めている。有力なニュースメディアが、ウィキリークス的な調査取材手法を採用しようとしているのだ。まずアラブ系メディアのアルジャジーラ(Al Jazeera)が今月、Al Jazeera Transparency Unit (AJTU)を立ち上げた。アラブ圏内だけではなくて世界中から匿名の情報提供を支援者から受け付ける。狙いは、まだ報道されていないがニュース価値のある政府や企業の行動にスポットライトを当てていくことである。もちろん、情報提供者の提供情報や個人情報のセキュリティーは暗号化などで徹底して堅持する。提供された情報は AJTUのために働くジャーナリストしかアクセスできないようにする。New York Times(NYT)もリーク情報を収集するために、同じような調査取材手法を採用する予定である。
また今週、CUNY( City University of New York) Graduate School of Journalismの学生Matt Terenzio氏が、Localeaksを立ち上げた。内部告発のリーク情報を、提供者が指定した新聞に届けるシステムである。全米の約1400の地方新聞が主対象になる。調査報道に熱心なジャーナリストのJeff Jarvis氏は、the Tow-Knight Center for Entrepreneurial Journalismのディレクターを務めているが、教え子が仕掛けたLocaleaksプロジェクトを非常にクールだと絶賛している。以下は、Localeaksの情報提供フォーマットである。州を指定すると、州内の新聞が現れる。その中から選んだ新聞に、リーク情報が伝わる。

続々と登場する内部告発サイトには、メディアを介さないで草の根的に生まれているものも多い。昨年は、ウィキリークス( WikiLeaks)の派生的なサイトが大半で、地域やテーマを絞り込んだサイトが目立つ。昨年末にReadWriteWebがまとめた内部告発サイトの一覧を以下に掲げる。
・Balkan Leaks: Balkans, site,
・BrusselsLeaks: Belgium,
・Haikuleaks: "Haïkuleaks Cable is poetry 65 haikus in 1830 cables."
・Indoleaks: Indonesia
・israeliLeaks: Israel, focused on gathering leaked documentation in and about Israel and surrounding countries.
・OpenLeaks
・PinoyLeaks: Philippines,
・PirateLeaks: Czech Republic,
・Rospil: Russia, documenting corruption in upper echelons of Russian government and economy.
・thaicables: Thailand, focused soley on Thailand.
・Thaileaks: Thailand (original site banned),
・Tunileaks: posts and discusses Tunisia-specific cables.
最近のチュニジア政変でも、告発サイトの「Tunileaks」が大きな影響を及ぼしたと言われている。昨年12月に立ち上がった同サイトは、ウィキリークスが暴露したベンアリ前大統領たちの不正を訴え続け、反政府運動を後押ししてきた。

ロシアでも市民が腐敗した政治や企業を告発できる「Rospil」が注目の的になっている。ロシアの政治や国営企業などの不正を告発している政治活動ブロガーが立ち上げたサイトであるからだ。でも内部告発サイトは反政府運動と連携することが多いだけに、ロシアでも自由な活動が継続できるかどうか不安視されていた。ところが、世界経済フォーラム(World Economic Forum、WEF)年次総会(ダボス会議)で基調演説したメドベージェフ大統領は、「情報の暴露は国際関係をより健全なものにしていく」と意外にもウィキリークスを擁護した。
さて、国内ではこのような内部告発サイトが育つのだろうか。マスメディアが政府や企業を敵に回すような調査取材手法を採用できるだろうか。
◇参考
・Localeaks: A Drop-Box for Anonymous Tips to 1400 U.S. Newspapers(ReadWriteWeb)
・WikiLeaks' Imitators Proliferate But Go Their Own Way: A Catalog of Clones(ReadWriteWeb)
・WikiLeaks + Hyperlocal = Localeaks(WebNewser)
・Cables From American Diplomats Portray U.S. Ambivalence on Tunisia(NYTimes.com)
・WikiLeaks Russia website blocked over Putin palace pix(RIA Novosti)
・The disruptors arrive at Davos(BuzzMachine)
・NY Times considers creating an ‘EZ Pass lane for leakers’(The Cutline、Yahoo News Blog)