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2011年02月16日

米アップルのApp Storeの定期購読ルールが確定、雑誌/新聞の流通や広告の主導権を握るのか

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 米アップルがApp Storeにおける定期購読(サブスクリプション)ルールを発表した。iPadやiPhoneなどのiOSアプリで提供されるコンテンツ(雑誌、新聞、音楽、動画など)を、月間や年間などの定期期間で購入できるようになる。

 昨年4月にiPadが登場し、電子雑誌や電子新聞のeリーダーとしても期待されているのに、今ひとつiPad向け電子パブリッシング市場の立ち上がりが鈍かった。その要因の一つに、定期購読サービスが実施されていなかったことがあった。米国では新聞だけでなくて雑誌も、割安の定期購読が中心なだけに、そのサービスの実施が待たれていたのだ。

 そこで、アップルと大手パブリッシャー各社(雑誌社や新聞社)との間では、定期購読の進め方を巡って、昨年半ばころから交渉が続いていた。ところが激しい綱引き合戦が続き、なかなか妥協点が見いだせないままになっていた。そうこうしている間に、アップルはApp Storeの定期購読ルールを固め、一足先の2月2日に創刊したNews CorpのiPad専用新聞「The Daily」に定期購読サービスを適用した。今回の発表は、基本的には、The Dailyに適用した定期購読サービスを他のパブリッシャーにも開放するということだ。

 はたして、パブリッシャーにとって、この定期購読ルールは受け入れられるのだろうか。読者が定期購読をApp Storeで申し込んだ場合、定期購読料の30%はアップルによって徴収される。でもこの定期購読申込みに関して、アップルも少し譲歩している。AppStore以外のサイト、例えばパブリッシャーの自社サイトでも定期購読が申し込めることを認めたのだ。この場合、定期購読料は100%、パブリッシャーの収入となる。パブリッシャーにとって心配なのは、既存の雑誌/新聞(紙)の定期購読者が更改時AppStoreで申し込み、その読者からの定期購読料収入が30%減ることであろう。その対抗として自社サイトなどで申し込ませたい。ところがアップルは甘くない。自社サイトなどで提供する定期購読サービスと同等あるいはそれ以上のレベルで、AppStoreでも実施しなくてなならないとした。パブリッシャーは自社サイト内だけで時別のキャンペーンなどを行えない。またアプリから、自社サイトへの誘導リンクを張ってなならないとなっており、思い切った販売手法がとれない。

 ということは、新規読者だけではなくて既存の定期購読者も、AppStoreで電子雑誌/新聞を申し込みする場合が増えていくのでは。そうでなくても、サービスメニューが豊富で集客力があり、定期購読などの申し込みも簡単で、決済サービスも実績があるAppStoreに流れていきそうである。

  アップルが狙っているのは購読料だけではない。本命は広告売上との声も。昨年から話題になっているのは、有料アプリ(電子雑誌や電子新聞)の購読料の30%に加えて、アプリ広告売上の40%を徴収することをアップルが狙っているということだ。 

  そのために、アップルは定期購読者の個人情報を独占しようとした。一方で、例えば雑誌社にとっては、読者の大半を占める定期購読者のデモグラフィックデータなどは、広告主と共有するための貴重な財産である。電子雑誌になっても購読者の個人情報はどうしても手元に持っておきたい。App Store経由の定期購読者でも本人が許せば、メールアドレスやzipコードなどをパブリッシャーが入手する道があるし。でもApp Store経由で定期購読する読者が増えてくると、パブリッシャーが行う個人情報の収集に制約が加わり、逆にアップル側に購読者の個人情報がどんどん蓄積されていくのかも。そして、広告営業の主導権もアップルが握るということになるのだろうか。

 そこで、アップルへの牽制の意味もあって、タイム社やコンデナスト社などの有力雑誌社は、Androidタブレット向けに有力誌の電子版に力を入れていこうとしている。今のところ、Android向けの場合、定期購読料の30%を徴収されることがないし、紙の雑誌の既存定期購読者を囲い込むことも可能である。でもiPadと別れて、Androidタブレットに完全にシフトすることは自殺行為かも。ともかくタブレット市場はiPadが事実上寡占に近い。iPadが保有ベースで約80%も占め、また販売ベースで現在でも70%弱を保っている。

 ということで、早くも今回の定期購読ルールに従って、Popular ScienceがiPad向け定期購読サービスを開始することになった。また電子新聞で定期購読サービスにいち早く突入したThe Dailyは、もともと紙の新聞がなくて既存の定期購読者がゼロからスタートしており、アップルの定期購読ルールが受け入れやすい環境にあったと言える。

◇参考
・Apple Launches Subscriptions on the App Store(プレスリリース)
・Sports Illustrated to Stop Selling Print-Only Subscriptions(AdAge)
・Popular Science Accepts Apple's Terms, Starts Selling iPad Subscriptions(AdAge)
・Apple rumored to announce newspaper subscription plan for iPad(Apple Insider)
・Condé Nast to Launch Magazine Editions for Google’s Android(The Wrap)
・iNewsstand, iAd and What Steve Wants(Digital Magazine Publishing)



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posted by 田中善一郎 at 16:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 出版 雑誌
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