ところが、伝統的なプリントメディア社のオンラインシフトは、必ずしもうまくいっていない。プリントメディア時代のノウハウや人的リソースが生かされない。それどころか、オンラインシフトのあしてまといになりがちであったからだ。それでも先進的なプリントメディア社、たとえばNYTや英Guardian、Washington Postなどは、サイトで新しいオンラインメディアの在り方を試行錯誤的に挑んできた。だが残念ながら、オンラインシフトで先行したからと言って、今のところ大きな成果を挙げていないのが現状である。
先週、Washington Post社から、2010年第4四半期(2010年通期)の決算が発表されたが、その中で新聞(オンラインも含む)だけのPLデータも明らかになっている。単独の新聞(ここではWashington Post)の決算データが得られるのは珍しい(たとえばNYTのように、複数の新聞から成るグループ単位のデータしか公表されない場合がほとんど)。
Monday Noteでは、新聞Washington Postの過去7年間の第4四半期のデータを次のようにプロットした。最初のグラフはオンライン売上/プリント売上なので、オンラインシフトの進捗度を示すことになる。順調にオンラインシフトが進んでいる。

次のグラフは各年の第4四半期の新聞紙広告売上高とオンライン広告売上高をプロットしている。7年間でオンライン広告の売上が倍以上になっているが、逆に新聞紙広告売上げが半分以下に激減した。絶対額で見ると、この7年間で新聞紙広告は8800万ドルも失っているの対し、オンライン広告は1900万ドルしか増やしていない。つまりオンライン広告1ドルを増やすために、新聞紙広告を5ドルも失っていることになる。

オンラインシフトが進みオンライン売上の比率が高まっているといっても、実は新聞紙広告売上を大きく減らし、伴ってプリント売上が激減したからである。確かにオンラインシフトのアクセルを強く踏み込めば踏み込むほど、経営破たんの時期を早めるのかもしれない。そこで、プリント売上(大半が新聞紙広告売上)になるべく悪影響を与えない範囲内で、オンライン事業に取り組もうとする新聞社が少なくない。これでは、単なる延命策で展望が開けない。こうした中途半端なオンライン事業では、プリント売上のしがらみのない新興のニュースメディア(Huffington PostやPoliticoなど)と戦っていくのは厳しいだろう。
◇参考
・The Publisher’s Dilemma(Monday Note)
・The Washington Post Company Reports 2010 and Fourth Quarter Earnings(The Washington Post Company)