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2011年04月10日

米雑誌に薄日、ビジネスウィーク誌が見事に復活

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 米雑誌業界に薄日がさしている。

 リーマンショック以降、米国の雑誌は深刻な広告不況に見舞われた。プリントメディアの構造的な衰退も重なって、底なしの状況に陥っていた。「紙の雑誌にすがっていては先がない。iPadの出現に合わせて、電子雑誌に賭けよう」との切羽詰まった声までも出かけていた。

 ところがしぶとく回復軌道に乗る雑誌が現れ始めている。同じプリントメディアでも新聞ほどひどくはなさそう。四半期別の全米雑誌の広告売上および出稿広告ページ数が、2010年の第2四半期(4月-6月)から、前年同期比でプラスに転じたのだ。そして一昨日PIB(Publishers Information Bureau)が公表した今年第1四半期(1月-3月)のデータでも、広告売上高が同6.1%増の43億ドルに広告ページ数が同2.5%増の3万5800ページと、プラスになっている。これで4期連続して四半期ベースの広告売上高と広告ページ数が、前年同期比でプラスを継続させた。落ち込みが大きかったから反動でプラスに転ずるのは当然との見方もあるが、元気が戻ってきたのは間違いない。

 各年(2008年〜2011年)の第1四半期の広告売上高と広告ページ数は次のようになる。%CHGは前年同期比である。2008年ころに比べ2011年はまだまだ低レベルにあるが、ともかく底なしから脱出できたのは大きい。米国の雑誌では、平均すると売上高の8割近くを広告に依存するだけになおさらである。

2011q120081qMag.JPG

 次は、代表的な雑誌を取り上げ、2011年第1四半期と2010年第1四半期のそれぞれの広告売上高と広告ページ数を示している。

2011Q1MagAd1.jpg
2011Q1MagAd2.jpg
(ソース:PIB: Magazine Ad Revenue and Pages Grow in Q1)

 雑誌は一般に、編集の自由度が大きく編集長の裁量も大きい。一昨年は総崩れになったが、最近のように少しは景気が持ち直してくると、編集の企画、つまり編集長の手腕次第で、雑誌の浮き沈みが大きく現れてくる。編集に魅力があれば、読者も広告主もついてきてくれる。そこで、以下のようが勝ち組みと負け組に色分けされていく。

MagAdGainerLoser.jpg
(ソース:The Top 25 Winners and Losers of the Magazine Ad Page Race、The Wrap)

 この中で最も目を見張ったのが、「Bloomberg Businessweek」の復活である。「BusinessWeek」は80年の歴史を誇るトップ経済誌であったが数年前から急激に勢いを失い、2009年末に発行元のMcGraw- HillからBloombergに売却されていた。編集内容も魅力を失っていたし、売却時に人気編集者も去っており、もうBusinessWeekは過去の雑誌になっていくと見ていたのだが・・・。それが、今年第1四半期の広告売上高が前年同期比65.3%増の4600万ドルに急回復している。広告売上で1年前までForbes、Fortune、Economistの競合3誌に水を開けられていたのに、一気にトップに躍り出たのだ。

BW.jpg



 Bloombergに買収された「BusinessWeek」は「Bloomberg Businessweek」と改名し、2010年4月から大幅に誌面刷新して再出発した。大きな変化は、72ヵ国146支局に散らばっている2300人以上のBloombergのジャーナリストが同誌を支援することになったことだ。Wall Street中心の視点よりもグローバルな視点の情報ニーズが高まっているだけに、大きな武器になっているのだろう。年間の発行号数も47号から50号に、号あたりの編集ページ数も平均して20%も増えた。Webサイトも世界中からのBloomberg Newsが流れており充実してきている。またデジタルコンテンツ配信サービス『Zinio』により、雑誌の電子版(デジタルのレプリカ版)をPCやMac、iPadなどで閲覧できる。年間51号分を¥3,845でこちらから申し込める。また、今年の米National Magazine Awardsの Single-Topic Issue 部門でBloomberg Businessweekがノミネートされていることも、復活が認められてきたためであろう。

 元気印の米雑誌の代表となると、やっぱり「People」か。2011年第1四半期の広告売上高でも、以下のようにトップを走っている。同誌の第1四半期広告売上高で過去最高を記録している。

*2011年第1四半期の広告売上高トップ5
1. People $236,332,270
2. Better Homes & Gardens $159,490,058
3. Sports Illustrated $145,329,598
4. Good Housekeeping $112,990,413
5. Vogue $96,303,773

 年間の広告売上高でも、2010年に10億ドルを突破した。以下のように、広告の大不況期にも売上げを伸ばしてきたのだからすごい。 
2008年:899,401,498ドル
2009年:933,135,770ドル
2010年:1,014,346,650ドル

 Peopleに登場する多くのセレブが、ツイッターでスキャンダルっぽい話題を振りまいているのも、追い風になっているのかな。それに今月は英国ウィリアム王子の結婚式が強烈な追い風になるのは間違いなさそう。そして2011年のPeopleの広告売上高は記録を更新するだろう。

 

◇参考
・PIB: Magazine Ad Pages Continue To Grow, Albeit Slowly(paidContent.org)
・NY Times vs. Bloomberg News: It’s War!(Forbes)
・Bloomberg Magazines Named Finalists for National Magazine Awards(プレスリリース)


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posted by 田中善一郎 at 12:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 出版 雑誌
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