まず,BBCやWNYCといった大手ラジオ放送局が既存番組をpodcastingで流した。雑誌社や新聞社のサイトからも,podcastingで情報提供を試す会社が出てきた。さらにGMやVolvo,Heinekenなどの国際企業もpodcastingで消費者に音声メッセージを送り始めている。
でも,本当に耳を傾ける消費者はいるのだろうか。実際は,podcastで音声情報を配信しても聴取する人は限られているのではなかろうか。GMはシカゴのオートショー会場から幹部のメッセージを,webcast(映像配信)するのに加えて,今年から新たにpodcastingを実施した。この時も,podcastingを聴いた人は少なかったという。
だが,発展途上のpodcastingに挑戦した成果は得られたと思う。アナウンス効果が大きいし,若年消費者の心を掴んだのは間違いないからだ。何か面白いことをやってくれるクールな企業,というイメージを抱かせたのではなかろうか。
若者ファッションとなってきたiPodとの相乗効果が見逃せない。podcastingを“iPod”と“broadcasting”の合成語にネーミングしたことが効いた。iPodの爆発的な人気に相乗りした形で,podcastingもマニアックな一部若者の間でアッという間に広まったのだ。Pew Internet & American Life Projectの最近の調査によると,米国の30歳未満の約20%がiPodなどのMP3プレーヤーを持っている。Jupiter Researchによると,米国でのMP3プレーヤーの販売台数は昨年が1130万台で,2008年に4500万台になるという。実際は,もっと大きな市場になるのでは・・・。最近のメディアの潮流を見ていると,ケータイやMP3プレーヤーを含んだポータル・メディア端末が,あらゆるメディア(音楽,映像,雑誌・書籍,新聞,ゲームなど)接触の主役になるのは,遠い未来ではないからだ。
そういう大きな流れに沿って現れたpodcastingを見逃すわけにはいかない。まだ,オーディオ・ブログかパーソナルラジオ局の域を出ていないが,来年以降に,新しいメインストリームのメディアに組み込まれていく可能性は高い。そういうこともあって,試す大企業が現れているのだ。
この段階でpodcastingに取り組むと,若者だけに受けるのではなくて,メディアへの露出も増える。企業イメージの向上につながる。昨年の年末当たりから,CNN,USToday,MSNBC,NYTimesなどのニュースサイトでも,podcastingの記事を見るようになった。当初はテクノロジー分野で登場していたが,最近ではビジネス分野でも紹介されるようになってきている。NYTimes紙はA1面(2月19日)で大きく扱った。メディア側からすれば,例えば新聞社サイトがブログを採用してもニュースにしにくいが,podcastingとなるとニュース性があるので取り上げやすい。当然そうした記事で,先行してpodcastingに挑戦している企業は好意的に紹介される。何でもそうだが,横並びの時期に追従しても,メディアやブロガーなどのインフルエンサーに相手にされないし,特に若年消費者からはダサい企業と見られかねない。
◇参考
・Tired of TiVo? Beyond Blogs? Podcasts Are Here
http://www.nytimes.com/2005/02/19/
technology/19podcasting.html(要登録)
・For a Start-Up, Visions of Profit in Podcasting
http://www.nytimes.com/2005/02/25/technology/25podcast.html?ex=1267246800&en=b118955cadc3cdac&ei=5090&partner=rssuserland
・Podcasting gets a boost from lower iPod prices
http://www.iproceed.com/blog/
2005/02/podcasting-gets-boost-from-lower-ipod.html
・Radio Days for Everyman
http://www.businessweek.com/technology/
content/mar2005/tc2005033_1790_tc119.htm
・More Than 1 In 10 U.S. Adults Have IPod. MP3 Players
http://www.techweb.com/wire/showArticle.jhtml?articleID=60401150