メディア産業が激変の時代を迎えるなかで、ニュースメディアの将来の姿はどうなっていくのか。それを見通していくためには、伝統的な新聞、放送、雑誌、通信社がどこに向かおうとしているのか、新興のオンライン会社がどのような新しいニュースメディアを生み出そうとしているのか、また大きな役割を果たしてきている技術会社が次は何を仕掛けようとしているのか、などなどの最新動向を見ていく必要がある。それにこれまでの経緯を示すアーカイブ情報も欠かせない。こうした情報を収集するために特化した百科事典「Encyclo」を5月18日に、米ハーバード大学のThe Nieman Journalism Labが発行した。無料のオンライン辞典である。
Encycloで取り上げた項目は、ニュースメディアに関する重要プレイヤー(メディアタイトル、メディア会社、技術会社、ジャーナリズム組織など)から最初に184点を選んでいる。
Online分野では、The Daily、Demand Media、Gawker Media、The Huffington Post、Politico、WikiLeaksなど120点。Magazines分野では、The Atlantic、Conde Nast、Newsweekなど16点。Journalism organizations分野ではPoynter Instituteなど3点。Wire servicesでは、Associated Pressなど3点。またTech companies分野では、Apple、 Facebookなど16点を取り上げた。Broadcast分野では、Al Jazeera、BBC Newsなど13点。Newspapers分野では、 The New York Times、The Wall Street Journal、 The Washington Postなど33点を選んでいる。
184項目(エントリー)のリストはこちらで。 実例として、The New York Timesのページを覗いてみる。
このNYTの例のように、エントリーのページは4つのセグメントから構成されている。
@narrative entry
該当のエントリーの概要。主に現況および将来のニュースメディアについてどのように取り組んできているかをまとめている。参考記事や資料へのリンクがたくさん張られているので、さらに深く調べることもできる。
Acollection of key links
この該当エントリーに焦点をあてた重要なニュース記事やコメントへのリンクが掲載されている。
Brecent Nieman Journalism Lab stories
この該当エントリーについて、最近Nieman Journalism Labで取り上げた記事(見出しと、概要、リンク)の紹介
CMediagazer
メディア分野のニュースアグリゲーターMediagazerから、該当エントリーを取り上げた最新ニュースを紹介。ソースは評価の高いニュースサイトやブログが多い。
The Nieman Journalism Labは、インターネット時代において質の高いジャーナリズムの在り方を探る研究所だけあって、このEncycloも良質の辞典になっている。大学組織の特権であろうか、選りすぐった世界中の記事やブログにリンクを張りまくっているので役立つ。また、キュレーターとしてのPrimary authorと最新の更新日を明記している。例えば先ほど見たNYTのエントリーでは、「Primary author: Mark Coddington. Main text last updated: May 24, 2011.」となっていた。メンテ(人手をかけたキュレーションや頻繁な更新)をしっかりやっていこうとする意気込みが伝わる。これまでも新聞社サイトなどでトピック欄が設けられているが、メンテが手薄になって質が低下しているものも少なくない。
◇参考
・Say hello to Encyclo, our new encyclopedia of the future of news(NiemanJournalismLab)
・About Encyclo(NiemanJournalismLab)