eMarketerが広告費について、同社を含めた各調査会社の予測データを、横並びに比較してくれている。各調査会社の対象範囲が違っているが、ここでは大ざっぱなトレンドを見たいため、それらの違いを無視する。
まず、eMarketerが占った米国新聞の広告売上高の予測(単位:10億ドル)。落ちるところまで落ちた感のある新聞紙(プリント)広告は、さらに2015年までひたすら下っていく。ただし微かな光明も。プリント広告の凹み分をオンライン広告で埋めることができなかったのだが、2014年ころから補えるようになり、総広告(プリント+オンライン)売上が下げ止まると期待している。
次が、各調査会社の比較である。ドイツ銀行の予測は厳しい。2014年〜2015年になっても新聞広告売上高は急な下り坂を転げ落ちると見ている(オンライン広告を含んでいないかも)。
eMarketerがはじいた米国雑誌の広告売上高の予測(単位:10億ドル)は次の通り。新聞に対してはわりと楽観的に予測していたのに対し、雑誌(プリント)広告売上高についてはかなり悲観的に見ている。
逆にドイツ銀行は、雑誌については楽観的に見ている。
参考までに、米国の各媒体の協会から公表されている実績データをもとに、過去6年間の新聞、雑誌、インターネット広告売上高の推移を、グラフ表示してみた(単位は100万ドル)。新聞は下降線を辿っており、2011年に入っても第1四半期の広告売上高が前年同期比で未だにマイナス成長を続けている。一方雑誌広告は、2010年にプラス成長に転じており、2011年も増え続けている。ドイツ銀行の予測のように、2015年には雑誌広告が新聞広告にほぼ追い付くこともあり得る。
Global entertainment and media outlook: 2011-2015
だだはっきりしているのは、新聞社も雑誌社もこれまでのように広告売上に大きく頼れなくなってきている。そこで、どうしても販売売上高(購読料収入)にこれまで以上に期待したい。デジタル分野で有料化が本格的に動き始めているのもそのためである。
今まで新聞や雑誌の広告予測はしばしば見かけるのだが、販売売上高(購読料収入)についてまとめたデータが見つけられないでいた。ところが今週、PricewaterhouseCoopersが発表した「Global entertainment and media outlook: 2011-2015」の中で、次のような販売売上高の予測が出ていた(単位:100万ドル)。
スマートフォンやタブレットの普及で、電子雑誌や電子新聞などのデジタル販売(オンラインも含む)が2015年までにどれくらい伸びるのか。ところが予測は甘くない。電子雑誌は事実上iPadの出現した2010年から立ち上がったのだが、その電子雑誌を含むデジタル販売売上(北米のコンシューマ雑誌が対象)は、2010年に400万ドルであったのが、2015年には6億1100万ドルに膨れ上がる。一方の新聞のデジタル販売売上は2010年の1億5000万ドルから2015年になっても3億3100万ドルとあまり増えない。それだけ、新聞の有料化が難しいとも言える。
読者の紙離れにより、プリントの新聞や雑誌の販売売上は当然落ちていく。新聞(プリント)の販売売上(curculation revenues)は、2010年に102億ドルだったのが2015年に95億ドルに落ちる。雑誌(プリント)の販売売上は2010年の92億ドルから2015年に88億ドルとなる。
新聞は、プリントで失った販売売上高をデジタル売上高で補えていない(プリントでマイナス7億ドル、デジタルでプラス1.8億ドル)。一方雑誌は、プリントで4億ドルの販売売上減となるが、デジタルで約6億ドルの販売売上増となる。
こう見ていくと、デジタル時代において、雑誌は活路を見いだせる可能性がありそうだが、新聞はやはり厳しいそう。それにしても、2015年になっても、スマホやタブレット向け電子雑誌や電子新聞の売上は、紙に比べて微々たるものである。だから、いつまでたっても紙にしがみつきたくなるのだろう。
◇参考
・Global entertainment and media outlook: 2011-2015(PwC)
・Gains in Online Magazine & Newspaper Ad Spending Will Not Offset Print Losses(eMarketer)
・Digital Subscriptions Will Lift Magazines But Not Newspapers(Forbes)