英国のMail Onlineと米国のHuffington Postである。ともに、サイトの月間ユニークビジター数で、英語圏で世界トップの新聞サイトNYTimes.comに肉薄している。comScoreから新聞サイトのユニークビジター数が毎月公表されているが、2010年12月から2011年5月までプロットすると、次のようになる。
*NYTimes、Mail Online、 Huffington Postの月間ビジター数(ソース:comScore)、単位:千人

1年前に遡って推移を見ても、Mail Onlineと Huffington Postの両サイトの急伸ぶりが際立つ。この勢いで両サイトがNYTimes.comを近く追い抜くのは間違いないだろう。今年は3月に日本の震災・原発事故やリビア・シリアなどの中東騒動のビッグニュースが続き、さらに5月に英王室結婚関連やビンラディン死亡のニュースで沸き、3月と5月にニュース特需のピークが生じた。一方、NYTimes.comは3月28日から実施した有料化開始時と重なったこともあって、4月に大きく落ち込んだ。
*New York Times vs Mail Online and Huffington Post traffic(2010年5月〜2011年5月)、 Source: comScore

Mail Onlineがなぜ人気が高いのかについては、こちらで紹介したが、ともかく実際にMail Onlineのサイトにアクセスすれば納得できるのでは。Guardianの記事によると、ユニークブラウザー数は一年前に比べ82.6%も増え、ユニークビジター数は38%増となった。その結果として、売上高が9%増、経常利益が10%増、広告売上高が15%増となった。新聞紙の販売にも好影響を及ぼし、販売部数(circuration)が4%増(英国内では11%)となった。
もう一方のHuffington Postは政治ブログを売りにして前回の米大統領選(2008年)ニュースで急浮上してきたオンライン専門の新興新聞。その後、総合オンライン新聞として、順調に成長。代表的な米国の新聞サイトの月間ユニークビジター数(米国内ユーザー)の推移のグラフからも、Huffington Postの躍進ぶりが際立っている。
AOLに買収されたが、AOL内のメディアサイトの編集はHuffington Post創設者のArianna Huffington氏に任されている。Huffington Postの更なる飛躍のために、まず次回(2012年)の米大統領選のニュースを充実させようとしている。そのために、33ケ所のローカルサイトを7月までに立ち上げる。選挙の実施が早い州の Iowa, New Hampshire そして South Carolinaの3州には, ローカルサイトを立ち上げたという。さらにローカルだけではなくてグローバル展開にも力を入れる。すでにカナダ版は始まっているが、7月6日に英国版を立ち上げる。これまでの米国版に英国ユーザー向けのオリジナルブログを付け加えていく。続いてフランス版を出す。さらにラテンアメリカ、オーストラリア、インド版も開発し、年内に計12ヵ国向けのHuffington Postを揃えていくという。Huffington Postの月間ユニークビジター数が一段と増えていきそう。
*米主要新聞サイトの月間ビジター数(ソース:comScore)、単位:100万人

◇参考
・MailOnline closes gap on NYT(MediaWeek)
・Huffington Post UK to launch on 6 July before going global(The Drum)
・ABCe: Mail Online nears 80 million monthly users(Guardian.co.uk)
・MailOnline reports return to growth(brandrepublic.com)
・AOL’s Huffington Post Expands Local News Ahead of Campaign(Bloomberg)
・The Huffington Post Passes The New York Times in Traffic(Atlantic Wire)
・大衆新聞が高級新聞を追い抜き、世界で最も人気の高い新聞サイトになる日(メディア・パブ)
・How the Daily Mail protects its paper behind a digital wall(Guardian.co.uk)