マードックの持論は、Googleが新聞社を苦境に追い詰めたということ。まるで盗人のごとくメディアのコンテンツを勝手に使って,Googleは繁栄を謳歌していると,マードックは主張するのだ。News Corp.のコンテンツがGoogleの検索エンジンに引っかからないように,禁じ手を使うぞと脅したりもした。実際、the Times/the Sunday Timesの記事の大半はGoogleの検索エンジンで検索できない。
ところが、有料化サイトの本家本元のWSJ.comの記事は、Googleの検索エンジンでアクセスできる。それどころか裏技を使えば、Googleの検索エンジンからWSJ.comの有料記事を無料で閲読できる。この裏技(こちらで参照)は未だに放置されたままだ。ソーシャルメディア・ユーザーにリーチするためや、NYTimes.comのユーザーを取り込むためと見られているのだが・・・。
さらにこの裏技以上の決め技が、6月10日あたりから米国のブログで紹介されていた。Googleのサイトで紹介されていたソフトを使えば、WSJ.comの有料記事が全て無料で見放題になる。すぐにも差し止めになるのではと思ったのだが。最近再び、人気サイトRegisterに「Google Chrome extension busts Murdoch paywall」という記事が出たのだ。それでも、いまだに放置されている。そこで、その決め技なるものを試してみた。
WSJ.comのサイトに行けば分かるのだが、以下のように有料記事には鍵アイコンが付いている。そして有料記事をクリックすると、右のような「SUBSCRIBER CONTENT PREVIEW」が現れ、記事の出だしの一部しか読めない。つまり課金の壁が置かれている。
上のWSJ.comの課金の壁を突き破るソフトとして「Read WSJ Extension」が出てきたのだ。それも、Googleが開設している「Chrome Web Store」(https://chrome.google.com/webstore)で紹介されているのだ。Chrome Web Storeは、Google Chrome 用のアプリ、拡張機能、テーマを取り揃えたオンライン マーケットである。
そこで、Chrome Web Storeで検索して「Read WSJ Extension」を見つけた。
クリックするとすぐにRead WSJ Extensionがインストールされた(ブラウザーに Chrome を利用)。
早速、WSJ.comにアクセスしてみた。すると驚くことに、鍵アイコンの隣にUnlockアイコンが現れているではないか。
そのUnlockアイコンにカーソルを近づけると、“Read Complete Article”の吹き出しが飛び出る。
その有料記事をクリックすると、以下のように“Article Free Pass”が表示され、記事全文が無料で閲覧できる。
実は、上の記事全文ページが現れる寸前に、一瞬、次のGoogle検索エンジンページが現れる(裏技経由なのか)。
これまでの裏技のような面倒くさい操作は不要で、すぐにWSJ.comの有料記事が無料でアクセスできる。なぜ放置しているのか。現在、米検索エンジン市場で寡占状態にあるGoogleに対して、FTCや州は独禁法違反がないかどうかの調査を行おうとしている。このニュースをいち早く報道したのがWSJで、うがった見方だがキャンペーンを張ろうとしているようにも思えるのだが。
ついでに、WSJ日本語版(http://jp.wsj.com/)をアクセスしてみた。するとUnlockアイコンが現れた。しかし、その有料記事に飛ぶと課金の壁が遮り、記事全文は閲覧できなかった。WSJ日本語版は対応しているのに、なぜ英語版は放置しているのか?
◇参考
・Google Chrome extension busts Murdoch paywall(The Register)
・Feds to Launch Probe of Google(WSJ.com)
・The Easiest Way To Read The Wall Street Journal For Free(Businss Insider)
・マードックの矛盾,盗人グーグル経由で有料のWSJ記事がタダで読めるのはなぜ(メディア・パブ)