CNNやThe Daily、Washinton Postなど10を越える大手ニュース提供者が参画し、フェイスブックの上で閲覧できるニュースアウトレット・アプリを出していくことになっている。「Facebook Edition」の概念が今ひとつ明確でないのだが、ユーザーは好みのニュースアウトレットの記事を選べるようである。ただ意外なのは、最大手のthe New York Timesが参画しないということ。NYTimes.comのpaywall(課金の壁)とFacebook Editionとが相容れぬ心配があるからである。
今回のファイスブックの計画に対し、ニュースメディア各社も無視できないだろう。ポータル時代のヤフーやサーチ時代のグーグルもそうだったし、そしてこれからのソーシャル時代のフェイスブックも、ニュースメディアと協力関係を築いていこうとしている。伝統的な有力ニュースマスメディアが、政治や経済などの世界でまだまだ大きな影響を及ぼすのは間違いないだけに、当然の動きかもしれない。ところが今まで、ヤフーやグーグルのような新興の巨大ネット企業と、伝統新聞のようなニュースメディア企業との間ではギクシャクすることが多かった。ヤフーやグーグルは読者を誘導し新聞サイトなどを手助けしていると主張するのだが、新聞社はヤフーやグーグルこそ新聞をダメにした元凶だと時あるごとに反発する。
ソーシャルメディア時代に突入した現在、米国においてはとりあえず、トップランナーのフェイスブックとの関係をどう築くかが課題となる。ニュースサイトへのトラフィックも、検索エンジンからが減り始め、SNSなどのソーシャルメディアからが増えてきている。以下のグラフはPewの調査結果で、米国の代表的なニュースサイトにおける、Google(検索エンジン)からのトラフィックおよびFacebook(SNS)からのトラフィックの割合を示している。約1年前の古いデータだが、現在はオレンジのFacebookからのトラフィックの比率がもっと高まっているはず。
(Graph:Economist,Data:Pew)
次は、同じ米国のニュースサイトにおける、月間ユニークユーザー数とFacebookトラフィック比率の関係を示している。
フェイスブックから新聞サイトへのトラフィックとしては、各新聞のフェイスブックページ(かつてのファンページ)がかなり貢献しているはず。幾つかの米新聞のフェイスブックページにおけるファン数の推移を以下に示す。この1年間で2倍から数倍、ファン数を増やしており、フェイスブックから新聞サイトへより多くの読者を誘導しているだろう。
また、フェイスブックページを開設することにより、ソーシャルメディア内でも話題になる頻度が高まるだろう。読者の声(コメント)数も増えるはず。以下の例は今朝のNYTimesの「なでしこジャパンがサッカーW杯初優勝」の記事だが、同じ記事への読者から寄せられたコメント数は、NYTimes.comよりもFacebookページのほうがはるかに多かった。
NYTimesはフェイスブックページの中で最も多くのファンを抱える新聞であり、これまでソーシャルメディアとの密な関係を重視してきていた。NYTimesサイトの活性化にも、成果を上げてきたと言える。だが、有料化路線をまい進するために今回のFecebook Editionプロジェクトに参画しないことが、NYTimesにとって吉となるか凶となるか、注目していきたい。
◇参考
・Facebook Is Getting Into the News Business(Mixed Media)
・New Twist in Paywall Debate As Publishers Get Wooed by Social Media(Marketing VOX)
・Facebook launching news platform Facebook Editions in September(Digital Trends)
・Stop the presses: Facebook CTO says news next in social revolution(BBC)
・WHERE PEOPLE GO, HOW THEY GET THERE AND WHAT LURES THEM AWAY(Journalism.org)
・The people formerly known as the audience(Economist)