ところが一方で,YouTubeはもうすぐ瀕死の状態に陥るとの見方も浮上してきている。Gawker Mediaが発行しているブログValleywagに,“Why YouTube is about to die”という見出しのエントリーが投稿されていた。Valleywagはシリコンバレーのゴシップ満載のブログで,少々過激で危なっかしい内容も飛び出るが,シリコンバレーの裏情報を知るには格好のブログである。
そのValleywagによると,YouTubeは経営的に追いつめられるとのことだ。特に,ネット接続の通信費が致命傷になりかねないと。今年初めから,通信費が月間100万ドル程度かかっていると見られている。年間にして1200万ドルにもなる。最近では,1日当たりのビデオ配信数が1億を超えている。今年の通信費が1200万ドルで済むかどうかも危うい。オフィス代や人件費を含むと,経費は年間2000万ドルを下らないだろう。
だが,売上のほうは不透明である。6月までは事実上,ゼロであった。やっと7月と8月に,100万ドルの収入を見込んでいる。映画や音楽,TV番組のプロモーションの場としての期待が大きいが,著作権侵害の問題を抱えているため,YouTubeを使ったプロモーションにクライアント企業が大金を注ぎ込むとは考えにくい。
さらに追い打ちをかけるように,もっと厳しい問題が待ちかまえているのだ。ネットの中立性法案が米下院で否決され,上院の商務委員会でも否決されたのだ。大量のトラフィックを流しているユーザーは今後,通信費の急増が避けられないかもしれない。Valleywagのエントリーによると,YouTubeはビデオの配信にLimelight Networksを主に利用しているが,そのLimelight Networksの通信品質が劣化し始めるというのだ。Packet Shaping(パケットシェーピング)と称する技術を使って,ネットの帯域幅制限をかけようとしているのである。ネット中立が崩れたことにより,ネットワークプロバイダーは多くの通信料を払うユーザーだけに通信品質保証サービスを提供し,逆に少ない通信料で済ませたいユーザーには帯域制限をかけることができるようになるのだ。
爆発的に膨らむ一方のトラフィックを抱えているYouTubeにとって,非常に厳しい状況に追い込まれそうだ。これまでの通信品質を確保するだけでも,通信費がかなり増大しそうである。YouTubeはSequoia Capitalから1150万ドルの資金を調達したと言われているが,その資金も通信費で瞬く間に吹っ飛んでしまいそう。
やはり買収されるかもしれないが,名乗り出る企業が現れるかどうか。
◇参考
・One more reason YouTube's in trouble: Net Neutrality is over(Valleywag)
・Feature: Why YouTube is about to die(Valleywag)
・シリコンバレーのゴシップブログ,Gawker Mediaが発行(メディア・パブ)
・大手メディアがYouTubeを買収するには10億ドルが必要か(メディア・パブ)
・YouTube、1日に1億のビデオを配信(TechCrunch Japanese)