新聞社サイトの適応例の話に入る前に,Informサービスそのものを見ておこう。Informは,Google NewsやTopix.netと同種のニュースアグリゲーターである。ただ,前にも述べたように,Informは主要顧客をメディアサイトに変えてきている。そこでメディアサイトの厳しいニーズに応えるために,従来のニュースアグリゲーターを超えたサービスを開発してきたという。
クローラで収集するコンテンツは,ニュースサイトのテキストベース記事だけではない。ブログエントリーとか,さらにビデオコンテンツやオーディオコンテンツも収集対象とした。検索エンジンの出来がどうかが決め手になる。同社は,独自のアルゴリズムにより,収集した各コンテンツを解読し,共通のセマンティク要素を抽出している。つまり,検索対象となる各ニュース記事や各ブログについて,topic,industry,organization,person,placeなどが何かを抽出しているのだ。技術的には,meta-taggingというようだ。要するに,タグ付けをコンピューターが自動的にやってくれているのだろう。この結果,同社の検索エンジンを使えば,質の高い関連コンテンツを選び出せると言いたいようだ。
ここで,そのInformのアグリゲーション(検索)機能を使ったNewsOK.com のサイトを覗いてみよう。“Israeli commandos clash with Hezbollah in northeastern Lebanon, seize five prisoners”というタイトルの8月2日付けニュース記事を取り上げてみた。以下は,このニュース記事の上段部分である。(クリックで拡大表示し,それから通常サイズに拡大)
まず左欄にある“RELATED CONTENT”では,Oklahomanのアーカイブ内にある関連ニュースの見出し(リンク付き)を掲載している。それに加えて,WWW ARTICLESの表示が出ている。そこをクリックすると,以下のように外部Webサイト上の関連コンテンツを紹介したページが現れる。
このページには,本ニュースと関連の高い,以下のコンテンツが掲載されている。
1)ニュースサイトの関連ニュース記事
2)ブログの関連エントリー
3)関連ビデオコンテンツ
4)関連オーディオコンテンツ
もちろんInformが提供する情報をもとに編成されている。このページで注目すべき点は,まず競合他社のニュース記事(見出しと要約)も提供されていることだ。この例で取り上げた記事は「イスラエル-レバノン紛争」のニュースであるが,関連ニュース記事としては,西側のメディアのソースだけではなくて,Jakarta Postなどのイスラム圏の記事も紹介していた。もう一つ見逃せない点は,このページに広告も掲載していることである。
次は,ニュース記事本文の左欄下部のスナップショットである。meta-taggingにより抽出されたタグ(キーワード)が掲載されている。つまり,このニュース記事と関連深いタグである。
特定のタグ(キーワード)をクリックすると,そのタグに関する以下の6種のコンテンツが紹介される。これらは,Informの検索エンジンの結果である。
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さらに,圧巻というか,やりすぎというか,記事本文からキーワードを抽出し,そのキーワード毎に,上と同じ6種のコンテンツも紹介している。下のスナップショットでは,例えば"Hezbollah"をクリックすると,Hezbollahに関するニュース記事やブログ,ビデオなどが紹介される。キーワードを自動的に抽出して,そのキーワードに関する案内ページに飛ばす手法は,はてなのサイトでお馴染みである。
以上が,OklahomanのNewsOK.comでの適用例である。確かに,これまでの閉鎖的な新聞社サイトとはうってかわって,外部リンク満載の開放的なサイトに変身している。ただし,記事本文にまで多くのリンク情報が存在して,外部リンクだらけで煩わしく感じるユーザーも出てくるかもしれない。また,TechCrunchが批判するように,関連の薄いコンテンツにリンクが張られることもあるようだ。必ずしもリンクが多ければ良いとは限らない。
これまで新聞社サイトは,リンク先を自社サイト内に限る場合が多かった。記事は,リンク先情報も含めて,責任をもって編集すべきと言う考えである。関連記事へのリンクも,多くは人手でチェックしていた。新聞社サイト側のコントロールがきかない外部サイトに対して,リンクを張ることはご法度であったのだ。リンク先のコンテンツを保証できないし,リンク先コンテンツが消えるかもしれないからである。
それが,今回のOklahomanのNewsOK.comでは,外部サイトへのリンクが売り物になっているくらいである。それも,外部リンクの選択を,自動的に行うInformのシステムに任せているのだ。Oklahomanの場合は,極端な例かもしれない。だが,新聞社サイトが開放路線を歩み出したことも事実である。こうなると,秋に実施する予定のWashington Postの開放路線がどうなるかが,やはり注目である。
◇参考
・新聞社系ニュースサイトの救世主?,Yahoo NewsやDiggに対抗する武器を提供(メディア・パブ)
・NewsOK.com: virtually everything from virtually everywhere(NewsOK.com)
・Inform Announces New Publisher Services and Initial Customers (Information Today)
・Scoop: Inform Reboots to Help Online Newspapers Like Washingtonpost.com Fight Back Against Digg and Google(Business 2.0 Blog)
・Newspapers to Use Links to Rivals on Web Sites(NYTimes.com)
・Inform.comの最新サービス(TechCrunch Japanese)