Weiboと称するマイクロブログは中国版Twitterと言われているが、Facebook風機能も備えているサービスが主流である。「Sina Weibo」と「Tencent Weibo」の2強が競り合っている。もう一方の動画サービスは、投稿動画が共有できるため中国版YouTube と呼ばれているが、最近ではNetflix風/Hulu風にテレビ番組や映画の動画配信に力を入れている。「Youku」を先頭に「Tudou」と「Sohu」が加わった3強のつばぜり合いが目立つ。
Weiboについては3月の記事で紹介したので、今回は動画配信サービスについて追ってみる。ここでは中国の動画サービス市場でトップを走っているYouku(優酷網)の動きを見てみよう。
中国の動画サイトは少し前まで、個人の投稿ビデオに加えて、違法コピー(海賊版など)のテレビドラマや映画で溢れていた。日本のテレビドラマやアニメなども数多く散見された。だが、久々にYouku(優酷網)サイトを覗いてみての印象は,かなり様変わりしている。昨年12月に実施した米国(NYSE)上場に合わせて、内外のコンテンツプロバイダーとライセンス契約を結び、違法コピー対策を講じるようになっている。Youkuのコンテンツの70%はライセンスをプロの作品か自前で制作したオリジナル作品で、残り30%がユーザーが生成したコンテンツとのことだ。
久々にYouKuにアクセスしたのは、中国の高速鉄道事故が起こった7月23日であった。事故直後から次々と事故関連の動画ニュースがアップされ、特設コーナーが置かれた。現在でも特設コーナーは残されており、視聴できる。
今朝(8月30日)は日本の新首相になる野田氏の動画ニュースをトップに掲載するなどニュースを充実させているが、やはり目玉は映画やテレビドラマであろう。今年に入って一段とエンターテインメントコンテンツの整備に力を入れている。特にハリウッド映画の拡充が目立つ。今年6月にはWarner Bros Entertainmentと契約し、今後3年間に400〜450タイトルのWarner Bros映画を提供していく。すでに同社は昨秋にDisneyから259エピソードを購入している。また昨日(8月29日)にはDreamWorks Animation とも契約し、中国で絶大な人気を誇る "Kung Fu Panda"をオンラインで配信していく。
映画スクリーン数を人口3億人強の米国が4万も配備しているのに対し、人口約13億人の中国ではわずか4200スクリーンしか存在しない。どうしてもオンラインへの期待が大きい。映画コンテンツはペイ・パー・ビュー(pay-per-view略:PPV)が多いが、月額定額制(20RMB)や、無料サービス(広告付き)も用意されている。人気映画が で50セントから1ドル相当あたりのPPV料金でオンラインで観ることができるようだ。先のKung Fu Pandaも、Youku's premium on-demand serviceで1ドル以下で提供される予定。1.5ドル以上要する海賊版DVDよりも安く済むというのも売りか。
8月17日には以下のようなHollywood Movies Channelを新設し、2000タイトル以上のハリウッド映画を集めている。無料のタイトルもあれば、有料のタイトルもある。
テレビドラマも人気が高い。国内だけではなくて海外、特に韓国ドラマを充実させている。博報堂の調査からでも明らかなように、最近では日本のドラマよりも韓国ドラマの人気が高まっている。そこで、今年4月に韓国のテレビ局SBSとも契約を交わし、約200シリーズ(総計6000エピソード)の韓流ドラマを提供していく。SBS以外のKBSやMBCなどの韓国テレビ局とも手を組み、1000エピソード以上のドラマを用意する。
もちろん国内の数多くのコンテンツ提供会社やテレビ局と契約しているが、最近ではオリジナル作品の制作も増えている。注目されるのは、企業スポンサーと組んで制作された作品である。中国で人気の高いアニメシリーズMiss Puff(泡芙小姐)は、今年の作品でGM, Sony Ericsson, そしてLenovoと組んだ。またPhilipsと組んで始まっているOne Step Aaway(幸福59厘米)も話題になっているという。
ところが競争が激化する中国動画配信サービス市場では、動画タイトルの拡充合戦も厳しくなる一方で、ライセンス料が膨らみ、またオリジナル作品の製作費も嵩んできた。このため、動画配信サービス会社の多くは赤字経営から抜けなせないでいる。Youkuは、2011年第2四半期の売上高が3060万ドルと前年同期比178%も伸ばしたが、435万ドルの赤字となっている。だが、有料コンテンツの拡充とユーザー数の増加で、早い時期での黒字化が期待されている。
McKinseyの予測によると、オンライン動画コンテンツの中国のユーザー数は、2015年には7億人に達する。
(ソース:McKinsey)
現在でも4億人以上のユーザーを抱える巨大市場であるが、収益化はこれからが本番かもしれない。広告売上に加え有料コンテンツの課金売上がどこまで伸びるかが鍵である。中国のオンライン動画市場の売上高は、2011年第2四半期で約15億元で、前年同期に比べ倍以上も増えている。
オンライン動画の広告売上高は約10億元で、シェアは次のようになっている。
(ソース:TechNode)
最後のトピックスとして見逃せないのは、Youkuを追うTodou(土豆網)が、8月17日にナスダック上場を果たしたことである。
◇参考
・The State of American and Chinese New Media(Penn Olson)
・Succeeding in China’s online video market( McKinsey Quarterly)
・Charts: China Online Video Market Update Q2 2011(China Internet Watch)
・China to Have over 700 Million Online Video Users by 2015(China Internet Watch)
・Youku and Partners See Success with Sponsored Original Content(PR Newswire)
・Youku Extends Financial Lead Over Tudou(TechNode)
・China : Advertising Season Drives up Revenue of Online Video(2Chinable)
・Youku, Tudou and Sohu Lead China’s Online Video Advertising Market(TechNode)
・Youku’s Cash Flow – Sources and Uses of Cash(Chinavestor)
・Youku.com Q2 loss narrows on another revenue surge(Total Telecom)
・Chinese video site Youku to launch animated web series, Miss Puff(Penn Olson)
・China's Youku.com To Buy 200 Television Series From South Korea's SBS(China Tech News)
・Youku’s New Hollywood Films Channel(Youku Buzz)
・博報堂Global HABIT調査 アジア10都市における日・韓・欧米コンテンツ受容性比較(宣伝会議)
・DreamWorks Animation partners with China's leading online video site(LA Times)