Facebookは先週末のf8会議で、メディアサービスの拡充を促す新機能を発表し、その時にニュース、音楽、映画などのメディア企業との連携も明らかにした。ニュースメディアとしては、Washington Post、Guardianの他に、英Independent、 The Daily(News Corp)、Yahoo Newsなどとも提携したようだ。また、フランスのLe Monde とL'Equipe も、新しいニュースフィードのTimelineが動き出してから、Facebookと手を組むという。
そこでまず実例として、Washington Post(以下Post)がFacebook上のソーシャル新聞として立ち上げた「Social Reader」をみていこう。Facebook会員であれば、こちらのページ(http://www.washingtonpost.com/socialreader)に飛んで、「f Read Now」と記したアイコンをクリックして、Social Readerに登録しアクセスすればよい。一度登録すれば、自分のFacebookホープページのアプリ覧に、Postのアイコンが掲載されるようになる。
以下は、私向けのSocial Readerページである。中央に私向けのパーソナライズドニュースが掲載されている。これまでの私のアクティビティ(どのような記事をアクセスしているかなど)や関心分野、いいね!と指図した事柄、それに私のFacebook友達が閲覧した記事などを参考にしてパーソナライズしているのだろう。それにPostの編集者が薦める記事も掲載されている。Postは今年の春先から、パーソナライズド・ニュースアグリゲーション・サービス「Trove」を試験的に実施していたが、このSocial ReaderアプリにこのTroveの技術を採用している。
ここで注目すべきことは、最初のスナップショットの例からも分かるように、APやReters、MashableのようなPost以外の記事が多く選ばれて掲載されていることだ。実際、私のSocial Readerには、washinton.postの記事がほとんど現れていなかった。もともとTroveでは多くの外部ニュースサイトから収集した記事を絞り込んで掲載している。先週末の発表時には、収集先のニュースタイトルとしては次の12種を対象としていた。
*パートナーのメディア企業
The Associated Press,
Express Night Out,
Foreign Policy,
GlobalPost,
The A.V. Club,
Reuters,
The Root,
SB Nation,
Slate,
Sugar Inc.,
WetPaint Entertainment
Mashable
パートナーのニュースメディアを募っており、すでに次のように20タイトルに増えている。さらにもっとパートナーを増やしていきたいようだ。
もう一つ注目すべきことは、Social Readerに掲載されている記事の全文を閲覧するために記事見出しをクリックすると、同じFacebook内のページに記事全文が現れることである(以下のスナップショットを参照)。外部のニュースサイトに飛ばないのだ。外部パートナーの記事が多いことからも明らかに、PostのSocial Readerは自社サイト(washingtonpost.com)へのトラフィック誘導を目的にしていない。あくまで、Facebook上のソーシャル新聞としてビジネスを展開することになる。たとえばFacebookとPost(パートナーも含めて)との間で、広告売上げをシェアするのでは。
このSocial Readerの特徴として、左サイドバーの仕掛けが見逃せない。今回のf8会議で新たに公開されたTicker機能で、リアルタイムでFacebook友達のアクティビティが表示されていく。この仕掛けの効果を説明するには、私のFacebook友達でSocial Readerに登録している人が必要だ。幸いにして、数少ないFacebook友達の中から早くも3人がSocial Readerを試していた。冒頭のスナップショット画面の左サイドバーにある“Friends Using Social Reader”のコーナーで、3人のアイコンが示されていた。
その下の“What People Are Reading”のコーナーには、上の3人のアクティビティ、つまりどのような記事を閲読しているかをリアルタイムで表示されていく。中にはPost編集が選んだと思われる記事も含まれていた。スナップショットは1日前の画面だが、1時間前に3人のSocial Readerの内の2人が同じ記事「Facebook Timeline: 」(Mashableの記事)を閲覧したことが示されていた。こうなると、この記事を読んでおかなければとなり、クリックするとすぐに同じページに記事全文が現れる。
このTickerには、Facebookサイトの外でのアクティビティも反映されることがある。Postのサイト(washingtonpost.com)でFacebook Connectを登録していると、washingtonpost.comで閲覧した記事がリアルタイムでFacebook友達のTickerに掲載されていく(オプトイン機能が用意されている)。
このようにソーシャル新聞では、読みたくなる記事が次々と現れ、特定のSNSサイト内だけで用が足せるようになるのかな?そして、そのSNSでのユーザーの滞在時間がますます長くなる。Facebookが狙っていることなんだろう。
英GurdianもFacebook上のソーシャル新聞に挑んでいる。 Guardian Facebook アプリを利用するには、http://apps.facebook.com/theguardianを訪れ、 "Use this application" optionを選べばよい。 追う時間がなかったので別の機会で紹介することにして、スナップショットだけを貼っておく。 guardian.co.ukの記事だけを対象にしているようで、PostのSocial Readerに比べると、あまり魅力的には思えないのだが。
またYahoo!NewsもFacebookと手を組んでいるが、Yahoo! Newsアクティビティと称する新機能によるサービスを提供していく。パーソナライズ機能やTicker的な機能を、Facebook上ではなくて、Yahoo!Newsサイト上で提供していこうとしている。友達がどのような記事を閲覧しているかが、すぐに分かるようになっている。ポータルのニュースサイトとしては自サイトでソーシャル化を実現し、ユーザーがFacebookサイトに流れていかないようにしたいのでは。
(画面ソースはYahoo Developer Networkから)
ソーシャル新聞は試行錯誤の段階。新聞などのニュースサイト側にとって本当にビジネスとして成り立つのかは、まだまだ不透明である
◇参考
・The Post Launches Social Reader As a Newspaper For Facebook(Mashable)
・Washington Post Social Reader: Editors’ note(Washinton Post)
・Washington Post Social Reader、FAQ(Washinton Post)
・The Guardian and Independent launch Facebook apps(journalism.co.uk)
・Guardian Facebook app: FAQ(Guardian)
・Media companies revisit their AOL days with Facebook(GIGAOM)
・The Washington Post Launches Trove, A Personalized Social News Site(TechCrunch)
・Mixer – The Data Service that Powers Yahoo! News Activity(Yahoo Developer Network)