欧米の新聞社や出版社が危機感を募らせているのは,安定したビジネスモデルを確立できないままにオンライン・メディア市場で劣勢に立たされ始めているためであろう。サーチエンジン・サービス業者のようなコンテンツ・アグリゲーターが日増しに勢いを増しており,今やGoogleやYahooがメディア・ビジネスの主役に躍り出てきたのだ。GoogleやYahooなんてジャーナリズムのかけらもなくメディアではないという声も多いが,欧米の旧来型メディア業者はコンテンツ・アグリゲーターを敵と位置づけている。
なぜ,急にこのような展開になってきたのだろう。この2〜3年,サーチエンジン技術の進歩,ブログの出現,RSSの浸透,ブロードバンドの普及・・・が,オンライン・メディアを取り巻く環境を激変させた。世界中のWebコンテンツをもの凄い速さでかき集め,それらコンテンツをほぼリアルタイムに分類したりインデックス化できるようになってきた。コンテンツ・アグリゲーターは,こうした技術を駆使して,ユーザー・ニーズに応えてセグメント化(ターゲット化)されたホットな情報を提供しているのだ。RSS配信が一段と広がっていくに伴い,コンテンツ・アグリゲータはもっと付加価値の高い情報を提供できるようになる。
一方,オリジナル・コンテンツを武器にネット・パブリッシングに励む伝統的なメディア業者は,大半がコンテンツを無料でユーザーに提供している。だから広告に依存するビジネス・モデルとなる。そのためより多くの読者を確保することに注力する。そこでコンテンツ・アグリゲーターに無料でコンテンツ(見出しや要約)を使わせることになる。NY Timesのように,掲載料を払ってまでコンテンツ・アグリゲーターにコンテンツを渡す新聞社までが出てきたのだ。
前にも言ったが,オリジナル・コンテンツを作り出す新聞社や出版社はコンテンツ・メーカーである。一方,コンテンツをかき集め付加価値を付けていくコンテンツ・アグリゲーターはコンテンツ商社と言えるのではなかろうか。かつてのモノ作り全盛の時代でも,メーカーよりも商社が儲けていた。オンライン・メディア・ビジネスでも,同じような流れになってきた。
だが,このままで進んだら,おもしろくない。コンテンツ・メーカーである新聞社や出版社が巻き返しに動き始めた。メーカーだけで終わるのではなくて,商社事業にも乗り出そうとしているのだ。その動きの一つが,冒頭に述べた自社ブランドRSSリーダーの配布である。
(以下,続く)
◇参考
・「新聞社サイトが変身の兆し,RSSニュースリーダー提供に踏み込む」
・「CnetもRSSリーダーを立ち上げ」
・欧州の出版社VNU,RSS技術で強力な流通チャンネル構築へ
・「NYTimes.comがニュース・アグリゲーターの特等席を購入」