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2012年02月24日

Pinterestの行く先、NapsterかYouTubeか

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 Pinterest(ピンタレスト)の行く末は?
Napsterのように失速してしまうのか。それともYouTubeのように繁栄するのか。

 NapsterもYouTubeもかつて、アーリーアダプター連中に熱烈歓迎され勢いよく立ちあがったが、サービスがある程度の規模に達すると、既存のメディア業界から著作権侵害で猛反発を食らった。そして、Napsterは音楽業界との戦いに敗れた形で事実上運営ができなくなった。YouTubeも映像(TV、映画)業界から著作権侵害で訴えられたが、息絶える寸前にGoogleに買収され、Googleの資金で映像業界と交渉を重ねた結果、今やネット上の映像流通の主導権を握るまでに登りつめている。

 ところでPinterestはどうなるのか。この半年少々の間に、アーリーアダプターだけではなくて一般女性ユーザーも巻き込んで急成長を続けているのだが、既存のメディア業界から著作権侵害で抗議されてもおかしくない規模に一気に浮上してきている。その動きを察知したのか、先週あたりから米国の有力ブログがPinterestサービス上での著作権侵害問題を大きく取り上げ始めているのだ。

 もともとPinterestは著作権侵害の不安を抱えていた。Pinterestのユーザーは、ネット上の画像を手軽に自分のPinterestボードに貼り付ける(pinする)ことができる。「Pin It」ボタンのブックマークレットを設定しておけば、Web上の関心のある画像を無断でスイスイとボードにpinできるものだから、大半のユーザーは画像の著作権を気にしなくなるのではなかろうか。さらに、Pinterest内の他人のボード上に気に入った画像が見つかれば、それらを自分のボードに貼り直す(repin)ことも簡単にできてしまう。RJMetricsの調査によると、下図のようにPinterestボードの画像の約80%はrepinされたものである。外部のサイトからpinした画像がPinterest内で拡散されていくのである。つまり著作権侵害された画像も一気に伝播することになる。

PinsbyMethod.jpg
(ソース:RJMetrics)

 そこで現在、Piniterestのボードにpinされている画像が、著作権問題を起こす心配があるかどうかを見ていきたい。以下のグラフもRJMetricsの調査結果であるが、pinされている画像数の多いソースサイト(ドメインサイト)のランキングである。

PinsofTopSourceDomains.jpg
(ソース:RJMetrics)

 トップはハンドメイド物のマーケットプレイスで有名なEtsy.comである。商品の写真が中心であるのでpinされることはソースサイトにとっても大歓迎で、著作権の問題を起こすことはまずないだろう。自分専用のボードをPinterest内に置いてプロモーションを進めているブランド/企業が増えてきているが、Etsy.comもアカウントを取り、ブランドボードを置いて自社サイトのお勧め画像をpinして、ユーザーによるコピー(repin)を促しているくらいだ。

 Pinterestのボードにpinされている画像の大半は、その画像のソースサイトへのトラフィックを誘導することになるので、心配するほど著作権問題が起こらないのではなかろうか。ただし、写真のように単独でも商品価値が高い画像も多く、無断で使われまわされるとクレームが発生しそうだ。クレジットが示されない形で画像が出回ることも問題だ。クレジットがないと、その画像を勝手に利用した者がオリジナル画像を制作したものと勘違いされたりする。

 
 上のグラフで示したように、Pinterestに画像が多く貼り付けられているソースサイトのランキング2位はGoogle.comとなっている。Googleの画像検索で示された画像が多くpinされた結果であろう。ここで、実際に試してみた。「Kilimanjaro」で画像検索してみると、キリマンジャロの写真のサムネイルが検索結果として現れる。そこでブックマークレットの「Pin It」ボタンをクリックすると、次のような画面に変わる。後は気に入った写真をカーソルで示し、クリックするだけで自分のボードにpinできてしまう。

PinterestImageSearchKilimanjaro.jpg

 問題はpinした写真が、Kilimanjaro from Google.comと表示されることだ。さらにこの写真のオリジナルサイトを知るために写真をクリックすると、Googleの画像検索窓のページに飛ぶだけである。制作者が分からないだけではなくて、これではまるでGoogleが画像を制作したように誤解される。でもGoogleを責めるわけにはいかない。画像検索結果のサムネイル写真をクリックすれば、ソースのサイトに辿りつけるようになっているのだから。


 プロの写真家が撮った優れた写真も、コピーされまくる懸念がある。例えばBoston.comがサイト上に毎日掲載している高解像度の報道写真「The Big Picture」も、簡単にPinterestに取り込めた。以下は2月10日のThe Big Pictureに掲載された2012 World Press Photo Contest Winnersの写真をpinしよとする画面である。 

PinterestTheBigPicture.jpg

 The Big Pictureには通信社の報道写真がよく使われている。ネット上の著作権侵害に神経をとがらしているAPは、自分たちの写真が無断で頻繁に使われ出すと、いつまでも黙っていないかも。

 また伝統的なメディア会社は一般に著作権侵害に対して神経質である。写真を売り物にしているメディアサイト、例えばNatinal Geographicとか VogueやCosmopolitanなどは、Pinterestに近づかないようにしている。Pinterestのアカウントを取ってブランドボードを立てたりはしていない。ブランドボードを立てて画像をpinすれば、その画像はコピーを容認することになるからだ。プロの写真家が撮ったスーパーモデルのファッション写真が、コピーし放題の形でPinterestに出回るのを警戒しているのかもしれない。

 でも、Natinal GeographicやVogueの写真も、それぞれのサイトからブックマークレットの「Pin It」ボタンをクリックするだけで、簡単にPinterestに取り込める。Natinal Geographicサイトの写真を試しにpinしてみた。pinした写真は、Pinterestユーザーによってripinされるだけではなくて、用意されたエンベッドコードでブログなどに簡単に貼り付けられるようになっている。以下は、PinterestからエンベッドしたNatinal Geographicサイトの写真である。

Source: photography.nationalgeographic.com via Zen on Pinterest



 以上の説明のために、Vogue、Google画像検索、Boston.com(Big Picture)、National Geographicのそれぞれの写真をテスト的にpinし、タイトル名がPin Testのボード(そちら)に貼っておく。

 おそらくPinterestがNapsterやYouTubeのように、メディア業界から猛反発を食らうことはないだろう。Napsterのようにメディア業界によって潰されることはないはずだ。だがPinterestの著作権侵害問題がにわかに取り立たされきたので、やはり対応を示す必要が出てきている。そこでPinterestは、Webサイト内の画像がpinされても良いかどうかを、サイト側でコントロールできることを示している。pinするのを許可する画像には、以下の例のように画像の近くに「Pin it」ボタンを配することを勧めている。 

PinterestpinItOprah.jpg

 逆にピンされたくない場合は、以下のタグをサイトのヘッダーに加えておけば、
nopin.jpg

 pinしよとすると、次のようなメッセージがポップアップされる。
nopinIndication.jpg

 今後たびたび著作権侵害問題が沸き起こるかもしれないが、それが急成長しているPinterestの致命傷にならないだろう。


◇参考
・Pinterest Might Be Enabling Massive Copyright Theft(Business Insider)
・New code lets websites opt-out of Pinterest.(LLsocial.com)
・Is Pinterest the new Napster?(LLsocial.com)
・10 Most-Followed Users on Pinterest(Mashable)
・Pinterest not a pirate anymore, helps site owners disable pins(Venture Beat)
・Pinterest's Rite of Web Passage−Huge Traffic, No Revenue(WSJ)
・Pinterest keeps and engages members better than Twitter, data shows(Venture Beat)
・Growing Up(Pinterest)

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posted by 田中善一郎 at 00:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | Web2.0 SNS CGM
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