・「YahooのFlickr買収,正式に決定」
・「草の根マルチメディアOurMediaが発進,明日のTVネットを目指す」
・Yahoo! Search Adds Support for Creative Commons Content
これら三つのニュースの共通項としては,パーソナルパブリッシング(パーソナルコンテンツ)がある。最初のニュースに出ているFlickrは,個人の写真コンテンツをベースにしたコミュニティサービスである。次のニュースのOurMediaは,個人のビデオ,オーディオ,写真,テキストなどのコンテンツを発信する草の根メディアである。ここで見逃せないのが,これら個人のコンテンツに対し,“クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons )”のライセンス形式を積極的に採用するよう働きかけていることだ。
そして最後のニュースが, クリエイティブ・コモンズ形式で登録したコンテンツを対象にした検索エンジンである。現在ベータ版を公開している。FlickrとOurMediaを含めて検索エンジンまでを,非営利団体のクリエイティブ・コモンズと連携してYahooが推進していることに注目したい。
これまで,インターネット上のコンテンツは,著作権対応の点で多くの問題を抱えていた。最近急拡大している個人ブログとなると,写真,ロゴ,テキスト,中には映像コンテンツまで他サイトから無断でCut&Pasteするのが当たり前になっている。仕事に関わるブログでも同じである。出回ってるコンテンツは,著作者も判らないままに,時にはコピーした人が原作者として広まる場合もある。こうした背景に,非商用目的ならいいやと無断コピーしてしまうこともあるが,著作権者にわざわざ承諾を得るのが面倒だし,やり方が分からないこともある。
クリエイティブ・コモンズは,そうした問題をかなり解決してくれる。個人の著作者自身でも手軽に,クリエイティブ・コモンズに基づく利用許諾条件などを設定できる。帰属(Attribution),非商用(Noncommercial),派生作品の禁止(No Derivative Works),同様に共有(Share Alike)について,著作者の要求を設定できる。でも,著作権者の権利を拡大させるのが狙いではない。逆に,第三者が,ある条件の下に,自由にコンテンツを再利用できる環境を整備しようとするのが本来の目的である。
例えば,個人の素人写真の場合などは,帰属のクレジットをきっちり明示さえすれば,著作権者の許諾なしで,再利用(コピー)してもらって良い場合が多いだろう。中には,商用利用であっても,自分の作品が認められたことを誇りに思う場合もあるだろう。その例として,「ちどりあしあと」さんのブログが参考になる。Flickrにアップロードした写真が,権威のある英国の新聞The Guardianのサイトに掲載されていた件を報告している。写真のライセンスについては「私はこれをアトリビューション―シェアアライクというレベルに設定している。加工も商用利用も可、だけどクレジットは必ず付けてね」という条件にしたという。許諾なしに使える条件だが,掲載前に担当記者から、「クリエイティブ・コモンズによって認可されたあなたの写真を使用しました。」という連絡があったようだ。こういうことは,マスメディアとしての礼儀かも。
こうしたコンテンツ,つまり条件さえ守れば自由に使えるクリエイティブ・コモンズ形式のコンテンツが,YahooのCreative Commons Searchで検索できるのだ。これは,すごいサービスに飛躍する可能性が秘められている。コンテンツもメディアも,消費者(市民)の役割がますます大きくなっていく。マスメディアも御利益がありそうだ。これまで記事中の写真を探す場合,社内になければ写真データベース業者の高額な写真を使わざる得なかった。だが,これからはCreative Commons Searchでさっと見つけて,中にはThe Guardianの例のように,許諾なしで無料で使える場合もあるだろう。オリジナルコンテンツを売り物にしていたマスメディアの地位は低下していくが・・・。