でもビジネスなどでの情報収集において、まだまだ検索エンジンに頼る場合が多い。Shareaholicがパブリッシャーサイト(20万サイト以上)へのビジットがどこから飛んできたかを調べた結果でも、約半数近くのビジットがグーグル(検索)からであった。一方フェイスブックからのビジットのシェアは7%にも達してない。
Pew Research Centerが最近公開した「The State of the News Media 2012」でも、オンラインでニュースに接する米国成人が最も頻繁に利用する経路としてフェイスブックやツイッターと答えた割合はわずか9%であった。ソーシャルメディアでの薦めに応じてニュースサイト/アプリケーションに頻繁に訪れる人は、意外とまだ少数派なのだ。
ブランド力のあるパブリッシャーサイトと見なされていた新聞サイトでも、かならずしもソーシャルメディアからのトラフィックが期待するほど多くないのかもしれない。実際、フェイスブックから新聞サイトへのトラフィックが急に増え始めたのは昨年からであった。ソーシャルメディアマーケティングに前向きに取り組む英Guardian(ガーディアン)ですら、以下のグラフにように昨年の秋ころまでフェイスブックからのトラフィックはグーグルの検索に比べ微々たるものであった。1年半前には、検索からのトラフィックが40%も占めていたのに対し、ソーシャルからのトラフィックは2%しかなかった。
ところが昨年10月あたりから突如、フェイスブックからのトラフィックが爆発的に増え始めた。そして先月(2012年2月)には瞬間的だがグーグル検索からのトラフィックを追い抜いたのだ。突然変異が起きた理由は明確だ。フェイスブックと提携して、ガーディアン紙のFacebookアプリ(https://apps.facebook.com/theguardian/)を提供し始めたからだ。これはユーザーが記事を"frictionless sharing"(手軽にシェア)できるソーシャルアプリで、編集的なキューレーションは施していない。つまり、編集者がコンテンツをコントロールしていないという。以下のスナップショットのように、閲読数の多い順に記事見出しが自動的に掲載されている。記事見出しをクリックして閲覧する記事全文も、フェイスブックのドメイン内にエンベッドされている。フェイスブックの友人が閲覧した記事はすぐわかるように明示されている。
このガーディアンのFacebookアプリのサービスが始まってからちょうど5ヶ月が経過した。その間、800万人がアプリをダウンロードした。毎日約4万人が加わっている。また最近の4週間で、400万人がこのアプリを利用したという。このアプリの利用している最大の年齢層は、これまでリーチが難しかった18歳-24歳である。またフェイスブックのお陰でこれまでにないグローバル展開も実現している。ルワンダやエルサルバドルでそれぞれ100人オーダーのユーザーを、またカンボジアやナイジェリアでそれぞれ1000人オーダーのユーザーを獲得できたという。さらにユーザーが積極的にコメントやリコメンドする傾向が見られ、このためコンテンツがバイラルに伝播していくようだ。
このFacebookアプリの開発・運用コストはあまりかかっていないのでは。フェイスブックのTanya Cordrey氏(director of digital development)は、開発コストをカバーするに十分な広告売上げをすでに生み出しているという。
◇参考
・Pinterest Sent More Referral Traffic Than Twitter in February(Shareaholic)
・Tanya Cordrey's speech at the Guardian Changing Media Summit(Guardian)
・Guardian Facebook app causes ‘seismic shift’ in social traffic, and The Onion launches its own(Poynter.)
・What Facebook and Twitter Mean for News:The State of the News Media 2012(Pew Research Center's Project for Excellence in Journalism)