まず、米国の有力新聞が提供するピンタレスト・ページを見てみよう。WSJ、USA TODAY、Washington Post、LA Times、Chicago Tribune、それに1か月前に始めたNY Timesの6新聞である。






これら6新聞を含めて、米国では131新聞もが既にピンタレストを活用しいる。その他、カナダでは13新聞、英国では5新聞、スペインでは2新聞、それにオーストラリア、オランダ、ポルトガルでそれぞれ1新聞が、ピンタレストを使って画像情報の提供に乗り出した。
ピンタレスト旋風に相乗りして手掛けているようだが、ニュースをいち早く提供したい新聞と、速報メディアとしてほとんど利用されていないピンタレストでは、相性が良いとは思えない。ニュース記事は一般にフローコンテンツで賞味期間も短く、ピンタレストに向いていない。ピンタレストを介して、ニュース記事を読みたいと言うニーズもなかなか起こりそうもない。
だが、新聞は速報のニュースを伝えているだけではない。多くの新聞では、ファッション、レシピ(料理、レストランなど)、旅行などのライフスタイル分野の記事もに力を入れている。これらの記事は賞味期間も長く、なによりも質の高い写真が豊富な場合が多い。一般に各分野専門の記者や外部コラムニストを抱えていおり、画像のキュレーターとして活躍してもらえそうだ。これまでのコンテンツや現在の人材を流用すれば、あまりコストを掛けなくても手軽にピンタレスト・ページを立ち上げることができそう。
新聞が蓄えている膨大な過去記事(アーカイブ)は、テキストベースのニュース記事検索サービスで利用されている。だが、写真などの画像で惹きつける古い記事は、多くが埋もれたままになっている。そこで画像が売りの記事にピンタレストでスポットライトを当てれば、埋もれた記事も生き返り読んでもらえるかもしれない。
そこで、NYT(The New York Times)のピンタレスト・ボードの実例を覗いてみよう。NYTのピンタレスト・ページには、37本の画像ボードを立てている。その中からSummer Drinksとタイトルが付いたボードを紹介する。現在、45点の写真が貼り付けられている。その中の1点が以下の写真である。

その写真をクリックしてソース元のコンテンツに辿りつくと、それは2007年6月27日付けNYTimes.comのDining&Wine欄の記事であった。5年前の記事なのに、3週間前に写真をボードに貼り付けるだけで、338回もrepin(写真の再貼り付け)され、75人からlikesされている。まさに埋没していたコンテンツがピンタレストのお陰で生き返ったといえる。

この写真を選んだキュレーターは、Emily Weinstein氏である。彼女はNYTのDining分野のライター兼編集者で、彼女の記事はNYTのHome and Dining sectionsでよく掲載されている。このほか、Dining & Home Web Producerや Dining Photo Editorも、Summer Drinksボードのキュレーターを務め、選んだ写真にはキュレーター名が記される。古い記事からの写真が多いのも特徴。どの写真もripin数が多いことからも分かるように、このボードの人気は高そう。Summer Drinksは季節にピッタリの切り口のボードで、女性が喜びそうなカクテル風のドリンク写真で賑わっている。このため、Summer Drinksボードのフォロワー数は7365人に達している。
新聞のピンタレスト・ボードは、まだ試行錯誤の段階である。やはり女性ユーザーをターゲットに、ファッション、美容、フード&ドリンク、ガーデニング、インテリアなどのテーマのボードが多い。またローカルな定期イベントや過去の歴史的な写真集も出てきている。例えば、Washington Postのページでは、毎年ワシントンで開催される桜祭り関連でAKB48のボードが立っていた。今年は100周年記念の文化交流が催され、日本代表がAKB48ということで立ててくれたようだ。でも残念ながら、AKB48の写真にlikesと言ったりrepinする人はほとんどいない。WSJはテキストベースのQuatesボードを設け、そのボードにWSJ.com記事で見つけた特徴ある引用文を掲載し、元記事への誘導を促している。Chicago TribuneのChicago historyには、シカゴで起きた歴史的な出来事のモノクロ写真を集めている。
幾つかの新聞のピンタレスト・アカウント例を、以下の表に掲げておく。pin(投稿)数と全体のフォロワー数も示した。

また、WSJやNYTのように有料サイトでは、ピンタレスト・ボードに掲載した画像の元記事に対してはPay Wallを外し、自由に閲覧できるようにしている。NYTのように創刊時からの全ての記事が固有のURLを与えられてアーカイブされておれば、面白い企画のボードを立てることができる。米国の新聞(サイト)はビジュアル化と雑誌化に力を入れているだけに、ピンタレストの活用が本格化するかもしれない。また、HeraldNetのように、記事に「Pin it」ボタンを置いて、ピンタレストからのトラフィックの誘導を図る新聞サイトも出てきた。
◇参考
・Newspapers on Pinterest(Pinterest)
・Pinterest Sends More Referral Traffic Than Google Referral, Twitter and Stumbleupon, Slightly Edges Out Bing (Shareaholic)
・New York Times Joins Pinterest(WWD)
・The List: Newspapers on Pinterest(Newspapers on Pinterest)
・@NYTimes Social Media Editor Lexi Mainland Talks Pinterest, Reddit and More(Ebyline)
・How The Wall Street Journal Uses Pinterest(mediabistro)
・5 News Organizations To Follow On Pinterest(mediabistro)
・Pinterest Referral Traffic Wins with Only a Tiny Percentage of the Pie (Marketing Pilgrim)
・PINTEREST REFERRAL TRAFFIC BEATS GOOGLE(jbiwebdesign.co.uk)
・Pinterest Becomes Top Traffic Driver for Women’s Magazines(Mashable)