なぜ個人アカウントのほうが商業アカウントよりも人気が高いのか。エリートキュレーターと呼ばれる個人の画像ボードには、生活を楽しむためのアイデアやインスピレーションが湧く画像が毎日のように貼り付けられている(pinされている)。多くのキュレーターのお陰で、サプライズ感、ワクワク感を抱ける画像を発見できる楽しが享受できるのだ。ピンラテストがソーシャルキュレーションを看板にしているのもうなずける。
一方の企業やセレブの商業アカウントは、ソーシャルキュレーションになりづらい。どうしても企業やセレブが提供する製品/サービスの写真などが中心となり、キュレーションではなくてプロモーションの傾向が強くなる。これは、多くのピンタレストユーザーの要望に沿っていないのでは。またDiorやLouis Vuittonなどのブランド製品とか、ミシュランの三ツ星レストランのメニューとかは、それらを紹介しているサイトに行けば見つけられる類の写真である。キュレーターに頼らなくてもよい。どうも商業アカウントのボードには、サプライズ感、ワクワク感を抱けるような画像が少ないということか。
そこでエリートキュレーターの個人アカウントの実像を覗いてみよう。例として米国のJennifer Chong氏(女性)の個人アカウントを紹介する。フォロワー数が約180万人で、フォロワー数ランキングで現在世界2位である。有名企業のアカウントでも1万人前後のフォロワー数をなかなか獲得できないでいるのに、一般にはほとんど知られていない若い女性デザイナーが、ここまでフォロワー数を獲得しているのはPinterestならではの現象である。
まず、Jennifer ChongのPinterestボードに飛んでみた。53種のテーマ(カテゴリ)ボードを立てており、総計3742点の画像をボードに貼り付けている(pinしている)。最初の4種のボードを掲載しているページを以下に示しておく。

次に、最初(左端)のボードTravel Hereに飛んでみた。彼女が選んだ観光地写真である。67点の写真をpinしていた。このボードのフォロワー数が約178万人である(個人アカウントにフォローすると、その個人のボード全てをフォローすることになる。このため最近では、特定ボードだけをフォローして、個人アカウントをフォローしない場合が増えている)。

最初の Yellowstoneの写真には、2706人がrepin(コピーして貼り付ける)し、734人がlike(いいよ)して、30人がコメントしている。次のイタリアのAmalfi海外の写真 には4280人がrepinし、1212人がlikeして、87人がコメントを寄せている。驚くべきインフルエンサーになっている。
彼女のピンタレストアカウントの統計データは、以下のようにZoomSphereで見ることができる。

フォロワー数は驚異的な勢いで増えてきている。今年2月9日で68万人であったのが、今では180万人である(彼女の53種のボードのユニークフォロワー数は200万人を超えているかもしれない)。彼女がキュレートした画像の多くは、pin数(repinされた回数に近い)が1000回を超えている。すごい影響力だ。毎日、新規に貼り付ける画像の数も、10点から30点くらいである。かなり時間を掛けて選りすぐっているのだろう。彼女はグラフィックデザインを大学で専攻し、現職もデザイナー/写真家となっている。食や旅も大好きで、それらのテーマの画像もキュレートしている。
彼女のデザイン作品はホームページ(jchongdesign.com/)で見ることができる。昨年の日本の震災や津波の支援活動で、以下のデザインを用いて実施していた。

彼女のブログも輝いている。記事(PREPKITCHEN LITTLE ITALY [PART TWO])でイタリアの片田舎に訪れた時の写真を載せているが、思わずpinしたくなる。
人気エリートキュレーターには、デザイナーとかファッションコンサルタントとかイベントプランナーのような、個人ブランドを武器に仕事をしている人が多い。いかにも感性の良さそうな人たちである。ピンタレストでのキュレータションは、かれらの仕事のためにも役立つし感性を磨くためにも必要なのかもしれないし、そして個人ブランドを高めていくにも欠かせないのだろう。企業アカウントでプロモーション目的でキュレートするよりも、個人アカウントでほとんど制約もなくキュレートするほうが、ピンタレストユーザーに受け入られるのだろう。
追記:日本のトップキュレーターはKyokoさんである。約85万人のフォロワーを擁している。Kyokoさんのピンタレストアカウントはこちらで。また統計データはこちらで。
◇参考
・ピンタレストマーケティングの鍵握るエリートキュレーターが台頭(その1)(メディア・パブ)
・台頭するPinterest、ソーシャルメディアマーケティングに新風を(メディア・パブ)