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2006年11月28日

紙媒体至上の新聞編集室が“Web-first”方針を実施できるのか

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 新聞社の編集室(newsroom)が“Web-first”(Webサイト優先)方針を打ち出しても,新聞記者が進んでwebサイト向けのニュース記事を書いたりするのだろうか。

 米英の新聞社は,生き残りを賭けて,オンライン事業に頼らざる得ない状況に追い込まれてきている。新聞紙至上の編集方針を貫くことが難しくなりつつある。オンライン事業で勝負するには,ニュース記事の出稿を“Paper-first”から“Web-first”へ切り替えていかなければならない。

 英Guardianは,6月のエントリーで紹介したように,ニュースの第一報をWebで発信していくことを明らかにしていた。その後,どうなっているのだろうか。最近,the Editors Weblogからの質問に,Harriet Sherwood(Foreign Editor for the Guardian)が答えていたので,その一部をまとめておく。

 まず,国際ニュースとビジネスニュース分野からWeb-firstを着手した。Webでのニュースは,英国だけではなくて世界に向けて24時間体制で提供している。英国時間の朝刊に合わせてニュースを発信していると,ジャカルタや北京の読者には30時間近く遅れることもありうる。AP通信社やロンドンに居るWeb記者による速報を,ブレーキングニュースとしていつでもWebで発信できる体制を敷いている。もう,Web-first方針を放棄することはあり得ない。

 速報性をあまりにも重視すると,“publish first, edit later”? となり記事品質が劣化させるのではとの心配が生まれる。だが,速度と品質のバランスを配慮しながら進めており,Webの記事も編集者のチェックが入れてからアップする。Web記事とすべきか新聞紙記事とすべきかの判断を,もっと現場記者に任せるべきかについては検討中である。実際には,ニュースをどのような形で料理していくかは,編集者(デスク)が現場記者と話しあって決めていくことになっている。また通信社などと速報で競うよりも,他では得られない記事を提供することに注力している。

 online-first publishing の編集方針に対する現場の反応は,おおむね前向きであるという。“速度 vs 品質”問題を懸念する声があったことも確か。新聞メディアの置かれた状況が厳しくなってきており,新しい変化を受け止めなければならないことを,記者自身が認識している。最近では,多くの記者がデジタルジャーナリズムの可能性と挑戦に興奮しているという。いつものことだが,若い記者ほどこうした変化を容易に受け入れているようだ。

 そして,最後のQ&Aは次の通り。
EW: Overall, do you think that online-first publishing will improve or harm journalism?

HS: There are both great possibilities and dangers for journalism. But I'm an optimist, so I think improvement will outweigh harm.

 要するに,危険も伴うが,デジタルジャーナリズムの道を優先せざる得ないと言うことか。

◇文献
・“Web-first” publishing at the Guardian: balancing between speed and quality(Editors Weblog)
・英Guardianの決意,ニュースの第一報は新聞紙ではなくてWebで(メディア・パブ)



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posted by 田中善一郎 at 09:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
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