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2012年08月12日

息を吹き返すか、米国の経済誌

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 米国の主要経済雑誌が好調だ。Bloomberg Business Week、Forbes、Fortuneの3大経済誌のいずれも、今年第2四半期の広告売上高および広告ページ数が前年同期に比べかなり上回っている。

*主要経済紙の広告売上高と広告ページ数(2012年第2四半期と2011年第2四半期)
MagazineBusiness201206.jpg
(Publisher’s Information Bureau)

 米国の雑誌は新聞と同様、広告収入に高く依存していただけに、厳しい状況に立たされている。2000年代に入って紙(プリント)離れが進むに従い広告事業が低迷し始め、雑誌産業に暗雲が垂れ込めていた。そして追い討ちをかけるように2008年にリーマンショックが襲い大変なことになった。年間広告掲載ページ数の増減率の推移からもわかるように、2009年には広告売上高が急落し雑誌の休刊(廃刊)ラッシュが続いた。

USMagAdPage2011.jpg

 それでも2010年には大きくリバウンドし、マイナス成長からの脱出が期待された。だが2011年は足踏みし、2012年に入っても四半期ベースの広告売上高と広告掲載ページ数で前年同期割れが続いた。最初の表に示したように米国の雑誌全体では、第2四半期の広告売上高で前年同期比で2.9%減、広告ページ数で8.6%減と下降線を辿り始めているのだ。

 このように雑誌産業が減衰している中で、主要経済紙が踏ん張っているのだ。でもリーマンショックで大騒ぎしていたころ、新しい情報を競って欲していた読者は、週遅れや隔週遅れの情報が載った経済雑誌(週刊誌/隔週刊誌)を見放しつつあった。経済雑誌の終焉の声すら聞こえてきた。以下のグラフのように、主要経済紙もリーマンショックで大打撃を被っていたのだが、その後、心配を吹き飛ばすように復活してきているのである。そして、2012年第2四半期の広告売上高は、Business Weekが前年同期比6.1%増、Forbesが19.7%増、Fortuneが7.3%増と、好成績を残した。欧州債務危機などによりますます混迷するグローバル経済の動向を先読みするための情報ニーズが高まっているためか。世界経済の混乱が逆に、グローバル経済誌にとって追い風になっているのかもしれない。

*主要経済誌の第2四半期・広告売上高の推移(単位:100万ドル)
BusinessMagAd2012Q2.jpg

 
 上の表とグラフに、3大経済誌に加えて英国のEconomistと新興のFast Companyも加えた。特に注目したいのがFast Companyで、広告売上が33.7%も急増し絶好調である。Fast Companyは、2000年前後のネットバブル時に相次ぎ登場したニューエコノミー誌の一つであった。The Red Herringや Business 2.0 などと共に、老舗経済誌を脅かす存在と持て囃された。だが、ネットバブルの崩壊とともにほとんどの雑誌が休刊し、生き残っていたのがFast Companyである。メディアキットによると2011年6月30日現在で発行部数(Total Paid & Verified Circulation)が738,950部となっている。月刊誌であるが、2回の合併号があるため、年10回の発行となっている。年間購読料は12ドルで、購読者はKindle電子版を無料で閲読できる。

FastCompanyAmazon.jpg

 Fast Companyは、ビジネス変革に着目し、最新のビジネスニュースや動向、際立った起業家、急成長のベンチャーなどに焦点を当てた記事を売り物にしている。雑誌記事の多くはサイトでも無料で閲覧できる。2012年9月号の記事はこちらで。

◇参考
・Big three biz magazines outperforming industry(Talking Biz News)
・The State of the News Media 2012: Magazine(PEJ)
・Magazine Newsstand Sales Still Falling in 2012(Adweek)

 

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posted by 田中善一郎 at 22:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 出版 雑誌
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