特許業務は未だに人海戦術に頼る場合が多い。特に,出願された特許の審査は大変な仕事量となる。特許が公知技術でないかどうかのチェックは,審査員などの一部の担当者に頼ってきていた。
特許業務をもっと効率よく進めるには,Web2.0風の集合知を利用できないのだろうか。ということで,米国特許商標庁(US Patent and Trademark Office:USPTO) が動き出したのだ。
washingtonpost.comによると,出願特許をWebに公開し,多くの人からのコメントを募る。そのコメントには,wikiとかブログを予定している。またコメントの評価も,Diggのような手法で実施したいようだ。つまり,WikipediaやDiggのやり方を参考にして,審査の効率化を狙う。特に,最近増えてきたソフトウェア設計分野の特許では,学術論文なども少なく審査に必要な資料を探すのに,審査官は苦労する。集合知の助けを期待したいのだ。
USPTOでは昨年,4000人の特許審査官が,33万2000件の特許を審査した。1人の審査官が平均83件の特許を審査したことになる。大変な負荷のようだ。Web2.0のシステムが上手く働けば,各特許に対する良質のコメントが集まり,審査官の仕事も効率化するのだろう。
このプロジェクトは,Community Patent Reviewの指揮を執っているNew York Law SchoolのBeth Noveck教授と,特許数で14年連続世界最多を記録しているIBMとの間で進められた会議をベースにして計画されており,今春から試験運用が始まる予定である。IBMやIntel,Microsoft,HPなどの大手ハイテク企業も,このプロジェクトの参加に同意している。
これは,まさに「パテント2.0」プロジェクトである。
◇参考
・Open Call From the Patent Office(washingtonpost.com)
・ Patent Office opening reviews online in “revolutionary switch”(Smart Mobs)
・IBMが年間米国特許取得件数で最多記録を更新 中堅・中小企業とのコラボレーションに向けた「Inventors' Forum」を発表(プレスリリース)