週次のベストセラー電子書籍の平均価格の推移を、昨年8月から今年3月までをプロットしたのが次のグラフである。Digital Book Worldが毎週、公表しているベストセラー・トップ25の電子書籍の平均売価を示している。
大ざっぱなトレンドとしては、昨年の秋ごろから、米国の電子書籍の価格が大きく下落してきていると言えそう。でも幾つかの高額のベストセラー電子書籍が昨年の夏に登場したこともあって、秋にかけて平均売価が一時押し上げられ、昨年10月には12ドル近くまで跳ね上がった。だがその後、年末のホリデーシーズンに向けて激しい価格競争に突入し、逆に一本調子で値下がった。年末商戦後には落ち着きを戻し、電子書籍の価格はほぼフラットになってきていた。ところがこの2週間、久々に連続して上昇したのだが、価格の反転が本物かどうかが、気になる。
大手出版社は電子書籍の価格戦略について、電子書店との綱引きもあって、必ずしも確定しているわけではない。欧米の大手出版社は米アップルとエージェントモデルで契約し、30%の手数料を払う代わりに電子書籍の価格決定権を得ることで進めようとしていた。これは、安値攻勢を仕掛けようとするアマゾンへの抵抗でもあった。ところが昨年の春先に、米司法省がアップルと欧米大手出版社に対し、独禁法の疑いがあるとして提訴した。出版社が電子書籍の販売価格をつり上げて、アマゾンの安値販売を妨害していると見られたのだ。そして、大手出版社は司法省と和解し、アマゾンなどの電子書店が価格を自由に設定できるようになってきた。
以下のグラフに示した矢印のように、
@ HarperCollins がアマゾンとの契約で、価格値下げを実施
A Hachetteと Simon & Schusterが同じく価格値下げを実施
B Macmillan も価格値下げを実施
電子書店の間の競争も厳しくなっており、客寄せのために、タダ同然の激安商品を並べたりしている。また、ランダムハウスとペンギングループの合併も、司法省や欧州委員会から承認され、世界最大の出版社が誕生することになった。おそらく世界最大の電子出版社にもなるはずで、電子書籍の値下げに圧力がかかりそう。
◇参考
・Ebook Prices on the Rise Again?(dbw)
・Discounting Begins for Macmillan Ebooks(dbw)